「DFコンセプト&カウンター」―バスケットボール戦術クリニック④―
- スイッチDFコンセプト
Post Switch “Scram”
スイッチで発生するインサイドのミスマッチを、オフボールスイッチ(あるいは一時的なダブルチームを経たスイッチ)で解消するコンセプト。相手が4out1inでないと使い辛いという欠点はあるが、極めて重要。
Triple Switch (2 switches in a row)
PNRでのスイッチと先のScramを組み合わせたコンセプト。PNRスイッチで発生するインサイドのミスマッチを、オフボールスイッチで解消する。
Scramでも同様だが、x1よりも相対的にサイズの大きいDF(例えばx3など)とスイッチしても有意義である。
Bigs switch (in PNR and Pindown Curl)
PNR、ないしPindown Curl(Away Curl)に対して、ユーザー⇔スクリナーのスイッチに加え、ビッグマン同士のスイッチも行うことで、すべてのギャップを最小化するコンセプト。3out2inに対しては、ScramやTriple Switchよりこちらの方が効果的になる。
ICE to Switch
ICEは、図の通り、PNRに際してベースライン方向にディレクションしながらソフトヘッジを行うDFだが、ICE to Switchでは、そこからスイッチに移行する。ICEからノーマルに戻るときのギャップを発生させないためのコンセプトで、これによる生じるミスマッチはScramで解消する。
Late Clock Switch-Out
ショットクロックが残り少ないタイミングでのPNRに対し、元々のマークマンではなく、オフボールのG-FのDFがスクリナーDFとしてSwitch-Outするコンセプト。これにより、ギャップを最小化できる。相手はショットクロックの残りが少ないので、そのスイッチによるミスマッチを攻めるのは難しい。
- スイッチDFアタック
HITBACK
ガード⇔ビッグマンのボールスクリーンでスイッチさせて、他のプレーヤーにボールを持たせてから、ガードOFvsビッグマンDFの「速さのミスマッチ」にボールを戻して攻めさせるコンセプト。
そのまま攻めさせるのではなく、一旦ボールを他に収めるのは「ビッグマンDFのヘルプDF⇔ボールマンDFの切り替えの遅さを突く」「他のプレーヤーにボールを持たせることで、そのDFを外へと引き出す」という二つの理由の為。
この後、同時に存在する「高さのミスマッチ(ビッグマンOFvsガードDF)」でオフェンスリバウンドを狙うのも重要になる。
Slip vs PNR Switch
Slipは、スイッチDFの弱点となる典型的なオフェンススキル。見落とされがちだが、スイッチに下手に対応すると、スクリーンが設置されて居た側のカバーが薄くなり、ドライブしやすくなる。
Slip vs off-ball Switch
オフボールスクリーン・スイッチに対しても、Slipは極めて有効になる。Slipを十分にケアしようとすれば、本来のユーザーに簡単にボールを入れることが出来たり、ボールマンのドライブに対しカバー・ローテーションが出来なくなったりする。(似たコンセプトとしてSlipを含むSplitも有効)
“154” Action
“154” Actionは4→1のPNRから、5→1のPNRに移行するプレー。図の通り、二回目のPNRを守るのが比較的鈍重なx4とx5になってしまい、平面のギャップが出来やすくなるという構造になっている。
Screen your own man
スイッチDFでは、スイング&スクリーンにSwith-Out(画像では、x5が外へスイッチしてケア)を行うのが通常である。これを逆手に取って、5がx5(your own man)にスクリーンすることで、スイングしてきたプレーヤーに簡単にボールを入れることが出来る。
Bunch Formation (Stagger)
図のような垂直なダブルスクリーンは、スイッチDFをしばしば混乱させる。また、5のSlip inや、x5へのScreen your own manを組み合わせることで、イージーショットやワイドオープンを作ることも出来る。
Backdoor (Reject)
スイッチDFに対しては、図のようなBackdoor (Reject)ムーブも有効になりやすい。これを一度でも試行して警戒させれば、アウトサイドでのパス回しは格段 に楽になる。Backdoorを含むSplitも極めて有効。
他にも…
SCREEN WITH WEAKEST DEFENDER'S MAN
一番ディフェンス力の弱い(特に、サイズが小さい)DFにマークされているプレイヤーがボールスクリーンを行い、わざと(スコア能力の高い)ボールマンへスイッチさせて、そのミスマッチを攻めさせるというコンセプト。
GSWvsCLEでは、このコンセプトによってレブロンvsカリーが作られ、レブロンが簡単に得点するという場面が散見される。
BIGS PUNISH SMALLS ON OFFENSIVE GLASS
スクリーン等によってビッグマンとガードのミスマッチが生じた際、ビッグマンがサイズ差を利用してオフェンスリバウンド→プットバックを試みるコンセプト。
追加
- ゾーンアタック(ゾーンオフェンス)
Seal or Screen
ゾーンDFは、それぞれのプレーヤーに固有のDFエリアがあるため、スクリーンによってDFエリアを制約することで、簡単に”フリーエリア”を作り、ワイドオープンを作ったり、相手に望まないローテーションを強制したりすることができる。
Stretch DF
ポジションチェンジやスイングなどを用いて、ベースラインDFをアウトサイドへ引き出せれば、ペイントエリアにスペースを作ることが出来る。
(ちなみに、1-3-1は既にベースラインDFが引き出された状態にあたる)
図は、Stretch DFにSeal or Screenを組み合わせたパターン。
Punching or Penetration
ドライブインによるPunchingで、相手にローテーションを強制させるコンセプト。ボールスクリーンを組み合わせることで、より容易にPunchingに成功しやすくなる。
また、Penetrationは「ベースライン・ドライブ」に弱いというゾーンDF一般の弱点を突くコンセプトになる。
Motion / Flow (→Overload)
Motion / Flowは、図のようにハイポスト&ローポストを目まぐるしく移動しつつボールを動かして、生じるギャップを攻めるコンセプトで、Overloadと組み合わせることもある。日本ではとても流行しているコンセプトだが、ゾーンDFに極めて有効であるスクリーンプレーと組み合わせ辛いのが難点。
おまけ
実は、スイッチDFとゾーンDFは、かなり似通った構造を持っている。
Screen your own manが有効になるのは、「インサイド側に居るDFがそのままインサイドをケア、アウトサイド側に居るDFがそのままアウトサイドをケア」というスイッチDFの原則の裏を欠くからだが、これはゾーンアタックにおけるSeal or Screenのコンセプト(スクリーンによる各DFのDFエリアの制約)と極めて似通っている。また、Post Switch “Scram”が徹底されているスイッチDFでは、最低でも一人以上のビッグマンが常にインサイドをケアすることになり、ますますゾーンDFライクになる。
参考ページ
推奨ページ
「オフボールムーブ」―バスケットボール戦術クリニック③―
0. スクリーンプレーの正しい考え方
・普通以上のDFの場合、スクリーンに素直にかかることはほとんどない。
・大抵はオーバー、ないしアンダーで抜けてくる。(あるいはスイッチ)
・このため、基本的には抜けられることを前提にスクリーンプレーを行うことが重要(※もし引っ掛かったら、当然それに対応)
・「相手のクローズアウトのランコースにスクリーンをセットし、(抜けたとしても)チェックを遅らせる」
「DFの抜ける方向に合わせて動きを変える」
「ユーザーのギャップだけでなく、スクリナーのギャップを存分に使う(そのために、スクリナーの動き出しを早くする)(スクリナーのギャップを使う特定のムーブ……Twist, Invert, STS, etc…)」
といったカウンターが必要。
1. オフボールスクリーンの基本オプション 3+1
ユーザーDFが後追いの場合はCurlを選択。
ユーザーDFがアンダーしてくる場合はFlareを選択。
ユーザーDFが先回りしてボディチェックしてくる場合はRejectを選択。
また、どのスクリーンプレーにおいても、ユーザーへのケアが激しい場合は常にスクリナーのSlipが有効なオプションになることを意識。
2. オフボールスクリーンの発展形
Twist and Invert
どちらもスクリナーのギャップにフォーカスを置いたムーブメント。
ユーザーのCurl、ないしユーザーのスクリーンによってスクリナーをオープンにする。
Flare, Flare Slip and Wiper
Flare Screenを基本形とした2+1種のムーブメント。
相手がスイッチを多用する場合はFlare Slipが有効。
Flare Screenを先読みしてアンダーしてきた場合はWiperが有効。
Split
俗に「シザース」とも呼ばれる動き。図のように、DFの読みに合わせて適宜バックドアを狙う。この動きをDFが十全にケアする場合、必然的にポストへのカバーは困難になる。
Double Stagger Series
垂直なダブルスクリーンから発展するムーブメント。
一般に、StaggerはスイッチDFを混乱させやすいという利点を持つ。
Stagger Twirlは、2のCurlから5→1 Awayに発展するムーブ。
Stagger Fanは、4&5のStagger(2のCurl)から、5→4 Flareに移行するパターン。
Screen-the-screenerと呼ばれるムーブメント。1番目のスクリーンに対してDFがヘッジしてくるのかスイッチしてくるのか(スイッチしてきたらCurl有効)、2番目のスクリーンに対してはスイッチしてくるか(スイッチしてきたらSlip有効)に応じて的確に動きを変える必要がある。
Over Under and Floppy
ウィングにオープンを作るムーブメントして頻出の2種。
ウィングのギャップの最小化に拘るとインサイドのギャップが大きくなり、双方に集中するとボールハンドラーへのカバーがおろそかになる、といった厄介な構造を持っている。
3. 合わせの4D(渦の理論)
合わせの動きとしては、上記の”4D”が基本。
4Dの選択は、右上図のような『渦の理論』に則って判断する。(渦の理論は、図の通りDFローテーションに”対応”してギャップを作る合わせの動きの理論)
4. StretchとClearout
StretchとClearoutはいずれもカバーDFを妨げるコンセプトだが、自分の位置関係、OFRBを狙うか否かや、相手のDFシフトに合わせて使い分けることが重要。
5.Clearout in PNR
PNRにおけるClearout。上図はスクリナーではない方のDFがゴール下でのClearoutを行うパターン。スクリナーDFがヘッジ&バックを行う場合は自分のマークマンをClearoutし、相手DFがBigs switchを行う場合は、スクリナーDFをClearoutすることで、ボールハンドラーにドライブコースを与えることが出来る。
こちらは、PNRスクリナーがClearoutを行うパターン。フラットスクリーン→jailから、カバーDF(スクリナーDF)にClearoutを試みるjail clearoutの他、ボールスクリーンに行くと見せかけてClearoutし、ドライブコースを作るパターンもある。
6. SlotとSpread
Slotは、あるポイント(コーナー、ウィング、ベースラインなど)に最初から1人で位置取り、そこでボールを受けるスペーシング・コンセプトである。
これに対し、Spreadは、2,3人以上の複数人が一か所に集中し、そこから一気に広がってスペーシングするコンセプトである。
相反するコンセプトであり、Clearout vs Stretchと同じく、使い分けが肝要になってくる。
参照ページ
「ボールムーブメント」―バスケットボール戦術クリニック ②―
0. ボールムーブメントの指針
・ボールムーブメントの目的は、ボールを動かすことで相手のDFをStretchさせたり、ストレスをかけたりすることで、オープンショットやイージーショットを作り出すことである。
・そのためには、相手DFの収縮⇔クローズアウトを強制する「インサイドアウト」が欠かせない。(どのようにインサイドにボールを置くか、が問題になる)
・また、インサイドアウトの後のパスorドライブの的確な選択が重要になる。
1. インサイドにボールを置く
ポストへのパス
ポストへのパスは、インサイドへボールを入れる最も典型的なプレーだろう。
ポストへのディナイがあったとしても、図の通り、コーナー&ローや、スキップパス&ローといった形(パスを入れるアングルの変更)を取ることで、ポストにボールを入れることが出来る。
勿論、ポストマンがディナイの”裏”を取り、そこにロブパスを飛ばすというパターンもある。
ドライブ
ドライブも、インサイドにボールを置く極めて単純な方法の1つである。
ボールハンドラーはこの際、ドライブしながらも、他のプレーヤーの動き、どこがオープンになっているかを正確に把握する能力が必要である。
カッティングへのパス
オフボール・カッティングへのパスも、インサイドにボールを入れる手段の一つになる。こうしたオフボール・カッティングでは、カットマンがシュートに固執しすぎることが問題になりがちなので、カットマンは常にパス・パスアウトをオプションとして意識する必要がある。
2. パスとドライブの選択
ドライブからのパターン例
良いボールムーブメントの例として、ドライブからの展開例を記述してみた。
ウィング→コーナー、コーナー→ウィングのExtra passによってDFをクローズアウトさせ、インサイドにスペースを作ってからドライブインするという構図である。
当然のことながら、キックアウトおよびExtra passの段階でのシュートは常にファーストオプションとなる。
ロールインへのパスからの”悪い”例
ロールインへのパスからの悪い例。
二番目の図の場合は、3へパスしてx3をStretchさせる必要がある。
三番目の図の場合は、ヘルプサイドに残り4×2人が固まっている状態なので、ドライブ自体が望ましくなく、シュートを打つか、オフボールの動きを待つべきとなる。
ロールインへのパスからのパターン例
ロールインへのパスからの修正例。
三番目の図では、ドライブ以外のオプションとして、再びインサイド(ポスト)へパスするパターンを記載した。
このパターンのように、ポストマンがそのまま貰う場合もあれば、Stretchしていた他のプレーヤーがカッティングして貰うパターンもある。(特に、コーナーからベースライン沿いに飛び込むパターンは頻出。ただし、息があってないと難しい…。)
3. リプレース / リターンパス
リプレース
より良いボールムーブメントのために、より良いオフボールムーブが必要なのは当然のことだが、特にリプレースを取り上げよう。(Dragとも呼ばれることがある)
リプレースは文字通り、ドライブはPNRによって生まれるフリーエリアに新しいプレーヤーがSpot upする動きだ。ローテーションの関係上、このSpot upを完全にディナイすることが難しく、そのためペネトレイトからのスムーズなボールムーブのために欠かせない動きとなってくる。上図はドライブ、PNRについてそれぞれ例示したもの。
リターンパス
コーナーまでボールを動かしたもののギャップを作りきれず…という場面は少なからず起こる。それに対して有効なコンセプトがリターンパスで、ウィングにボールを戻すことによって、上図のようにトップまで戻したり、あるいはサイドピックに移行できたり、という風にオフェンスを組み立てなおすことが出来る。もちろん、左右ウィング同士のリターンパス&PNRといった形も有効だろう。
参照ページ
スティーブンス、メッシーナのボールスクリーンDFコンセプト +α(Veer-Back)
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今回は、ボストン・セルティックスHCのBrad Stevens、及びサンアントニオ・スパーズACのEttore Messinaのクリニック・ノートから、ボールスクリーンDFコンセプトを紹介・解説していく。
(また、末尾では、ボールスクリーンDFの頻出パターンであるVeer-Backについて付随的に解説する)
このノートでは、スティーブンスのハードヘッジDFおよびアイスDFのシステムについて解説されている。(もちろん、ボールスクリーンDFに関する個々のスキルや心得についても丁寧に解説されているが、それらは本文参照のこと)
スティーブンスによれば、図のようなP&R(Spread P&R)に対して、同サイドコーナーDF(x3)がヘルプに向かうのは望ましくないという。
同サイドコーナーに簡単にパスが通り、ワイドオープン3Pを打たれてしまうからである。
なのでスティーブンスは、ヘルプサイドコーナーDF(x2)がロールへのヘルプに出るべきだと主張している。
なお、"Contain Blitz"とは、図のようなハードヘッジDFの際、ボールマンからパスが出るまでは、ボールマンDFとスクリナーDFで時限的なダブルチームを行うというコンセプトである。
これは、ボールハンドラーのイージーなスコアリングや、ゴール下への致命的なパスを防ぐ点で重要なコンセプトであり、ボールハンドラーが強力なプレーヤーであるほど有効となるコンセプトなのだという。
これらはミドルレーンでのPNPに対するローテーション、およびサイドPNPに対するビッグマン同士のスイッチDF("X Switch")の提示。
これらのローテーションやスイッチDFの精度は、ビッグマン(x4,x5)の機動力にかかっており、このため、スティーブンスは機動力に欠けるビッグマンの採用を好まないという。
これは、先ほど紹介したスティーブンスのDFコンセプト("X Switch", "Ultimate Helper")を練習するためのドリルだそうだ。side PNPに対してX Switchを行ってから、サイドチェンジし、spread PNRに対してUltimate Helperを行うというDFドリルである。
これはスティーブンスの提案するICEのDFローテーション"ICE to Blitz"の紹介。
まず、2は(カイリー・アービングのような)優秀なスコアラーだとして、その場合は、図であるように、ICEから"Down to Blitz"(ベースライン側に誘導してからのダブルチーム)に移行して、パスをさせる。
図では、スクリナーがポップして、サイドチェンジを行うことになっている。
図のように、サイドチェンジ後にドライブが始まれば、x2がBlitzに向かい(さすがにバスケットを守るのが一番大事なので)、x4が2(トップスコアラー)へローテーションする。(他にも、”ICE to Switch”が提案されているが、その解説はこの記事に譲る)
これは、ポップする4がシューターである場合のICE to Blitzパターンである。
さすがにシューターをオープンにするわけにはいかないので、x1がチェックに向かい、サイドチェンジ・パスが1へと飛ぶなら、x4がローテーションする。後の形は普通のICE to Blitzと同じになる。(ただ、文中でスティーブンス自身が言うように、x4が直接1へとローテーションするとは考えにくい。ヘルプサイドの他のDFがケアして、それによってオープンになったプレーヤーにx4がローテーションするのが普通だろう)
主だったコンセプトの紹介は以上だが、先ほども触れたように、ボールスクリーンDFに関しての(スティーブンス独自の)チェックポイントが多数解説されているので、関心があれば直接読むことを薦めたい。
メッシーナは、ミドルレーンP&Rにおいて、ボールスクリーンを遅れてアングルチェンジ(late angle change)するプレーを独自に"flip"と呼んでいるが、もしこれをされた場合、ボールマンDFは必ず"アンダー"すべきだと主張している。
なぜか。図の通り、スクリナーDFのヘッジは空振っている状態で、もしここでスクリーンを”オーバー”してしまうと、ボールハンドラーの自由度が高くなりすぎてしまう。
ボールハンドラーのシュート力が高い場合でも、アンダーして自由度を下げた方が失点リスクは低下する。
メッシーナは、上記の形のミドルレーンP&Rに対して、ベースライン際(ボトム)のプレーヤーがロール・カバーをするのは望ましくないと主張している。
コーナーへのキックパス、及びロールマンへのポケット・パスを防ぐことが不可能となるからである。
そこでメッシーナは、一番近いDFがロールをカバーすることを推奨する。
そうすれば、先ほど挙げたような致命的な二種類のパスは不可能になる。
また、x3がカバーに出た後に3にクローズアウトするより、x2がカバーに出た後に2にクローズアウトする方が、距離が少し短くて済むというのもポイントである。
図のように、ボールハンドラーが2人サイドへ、ロールマンが1人サイドへ向かう場合、「相手の狙いはより広いロールマン側のサイド」であることは疑いないため、x5はそれを想定したDFをしなくてはならない。(例えば、ボールハンドラーに対して稚拙なカバーに出ると、x5に簡単なパスを通されてしまうのでダメ)
図の"ZIpper Chase"のような、スクリーンユーザーがトップにエントリーしてPNRをするようなプレーに対しては、普通のコーチは(図のように)ボールスクリーンを使えないようにポジショニングしてPNRによるギャップ発生を未然に防ぐという方法論を唱えがちなのだそうだ。ただ、メッシーナによれば、これは間違っているという。
メッシーナの案では、スクリーンユーザーをHard denyし、より遠くでボールを貰わせた上で、PNRを"アンダー"すべきだ、ということになる。
こうした方が、失点リスクを抑えられるというのである。
このノートは、他にも示唆的な記述がたくさんあるので、Stevensのノートと併せて通読することを薦めたい。
おまけ Veer-Back
Veer-Backは、図の通り、ミドルレーンPNRに対し、x1が”Late Switch"してロールマンをボックスアウトするコンセプトである。
ボールマンに抜かれきってしまっているのに迂闊に戻ろうとすると、そのままロールマンへパスが通ってしまう。
そのようなシチュエーションでは、(苦渋ながら)このVeer-Backを選択する、という具合である。
これをしないと、ロールマンへFeedが通ってしまうことはもちろんのこと、オフェンスリバウンドでも不利になってしまうので、常にオプションとして意識しておかなくてはならない。
「ボールスクリーン」―バスケットボール戦術クリニック ①―
noteにて、シューターのためのムーブメント&セット、バスケットボール・ドリルまとめを販売中。是非ご購読を。
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0. スクリーンプレーの考え方
・普通以上のDFの場合、スクリーンに素直にかかることはほとんどない。
・大抵はオーバー、ないしアンダーで抜けてくる。(あるいはスイッチ)
・このため、基本的には抜けられることを前提にスクリーンプレーを行うことが重要(※当然、もし仮に引っ掛かったらそれ相応の対応が必要→スイッチに近い状況になる)
・「相手のクローズアウトのランコースにスクリーンをセットし、(抜けたとしても)チェックを遅らせる」
「DFの抜ける方向に合わせて動きを変える」
「ユーザーのギャップだけでなく、スクリナーのギャップを存分に使う(そのために、スクリナーの動き出しを早くする)(スクリナーのギャップを使う特定のムーブ……Twist, Invert, STS, etc…)」
といったカウンターが必要。
1. ボールスクリーンの基本的な動き…Roll&Replace, Pop&Dive
・ボールマンはノーマル、リジェクト、シュート、リトリート、スプリットといったオプションをきちんと使い分ける。
・ボールハンドラーに対し、常に中&外のパスコースを提供する。
・当然、外→中(アングルチェンジ)、中→外(インサイドアウト)のボールムーブも意識。
・中のプレーヤーはClearoutを常に意識。
(・サイドチェンジのためだけのピックも有効)
2. ボールスクリーンの代表的なDF
アンダー系
プッシュアンダー
スクリナーDFがスクリナーに下からコンタクトし、ボールマンDFが二人の下をアンダーして守る。割とメジャー。スクリナーのロールインを未然に防ぎつつ、ボールマンのペネトレイトを守ることが出来る。
ソフトヘッジ&アンダー
文字通り、スクリナーDFのソフトヘッジとボールマンDFのアンダーを組み合わせたもの。当然、ボールマンのシュートを全くケアできないが、スコアリングエリアから遠い位置でのピックに対しては有効なDF。
オーバー系
ソフトヘッジ&オーバー
読んで字の通り。ソフトヘッジ&アンダーに比べてシュートのケアはし易いが、ロールへのパスやキックアウトの視野が確保されてしまうし、スクリナーDFが鈍重すぎると結局抜かれてしまうことに注意。
ハードヘッジ&オーバー
ハードヘッジとオーバーの組み合わせ。ボールマンへのプレッシャーを確保できる反面、スクリナーのロールやポップに弱いので、それらを守るための高度なDFローテーションが必要。
アイス
ボールマンDFは(スクリーンの方向に関係なく)ベースライン方向へディレクションしてオーバー、スクリナーDFがソフトヘッジする。スイッチと並ぶ主流のボールスクリーンDF。ミドル側に行かせないことでボールマンがパスできる範囲を制約できる上、スクリナーのロールインもある程度ケアできるので、うまくいけば2on2でDFが完結する。
その他
トラップ
スクリナーDFがトラップに向かうパターン。スティールを狙ったり、ボールマンによるプレーをとにかく阻止するのには有効だが、オフボールマンのギャップは大きくなる。
スイッチ
文字通り。ギャップを最小化できるが、ミスマッチが生じる。ラインナップ次第でミスマッチがそれほど大きくならない場合(あるいは、オフボールのスイッチなどでミスマッチを最小化できる場合)や、ギャップの最小化の方が必要と判断した場合は、かなり良いオプションであり、アイスと並ぶ主流のボールスクリーンDFとなっている。
3. 代表的なDFに対するカウンター
アンダー系に対して→リピック(Re-screen) or ポップ or フラットスクリーン
アンダー系に対しては(Foot Raceを仕掛けた上で)リピックを行うことで、ペリメーター内でのギャップを作ってシュートを行うことが出来る。(Foot Raceのみでギャップを作り、ショットクリエイトするのも良い)リピックに対してアンダー系以外で対応するなら、後に紹介する他のカウンターへ移行する。
(※Foot Raceは文字通り、アンダーによって出来るギャップをスピードで広げるor利用するコンセプト。)
また、ソフトヘッジ&アンダーの場合、上図のように、スクリナーのポップで簡単にワイドオープンを作ることが出来る。
上図のようなフラットスクリーンも、アンダーに対して有効だ。普通の垂直なスクリーンだと、ボールマンDFがタイトなアンダーを簡単にできる一方、フラットなスクリーンの場合は、大回りのアンダーをせざるを得ず、ボールマン有利になる。ここでスクリナーDFがきちんとヘッジDFを行った場合は、スクリナーのスリップインが止めづらくなる。
オーバー系に対して→まずは基本(ロール or ポップ)
オーバーを行う場合、一般的にはボールマンDFとスクリナーDFの間にパスコースが生まれやすく、ロールインへのパスは出しやすくなる。このパスがカバーDFにケアされている場合は、アウトサイドに数的有利が生まれているため、キックアウトを狙える。
アイスの場合は特に、ロールインをスクリナーDFがある程度ケアしている分、ポップに非常に弱くなっている。
ハードヘッジに対して→リトリートorスプリット
ハードヘッジに対してボールハンドラーがリトリートドリブルを行った場合、左図のようにDFの望まないスイッチが発生したり、ボールハンドラーに二人DFが釣られてしまって(意図しないトラップになってしまって)オフボールにアウトナンバーが生じたりして、オフェンス有利の状況が生まれやすい。
また、スクリナーDFのハードヘッジが膨らんでしまった場合は、上図のようにボールマンDFとスクリナーDFの間をスプリットすることが可能になる。
アイスに対して→snake, DHO, or jail(&jail clearout)
アイスに対し、ボールマンDFを抜いてから、ミドル側へ切り返す上図のようなドライブのことをsnakeと呼ぶ。本来アイスはミドル側をシャットアウトすることで相手のパスを制限するものだったが、snakeはその目論見を無効にし、パスコースを確保するプレーである。 スクリナーがflat screen(ベースラインに平行なスクリーン)をセットしなおすのが一般的
「ミドル側へドライブさせない」というアイスの目論見を最も簡単に崩す方法は、上図のようなDribble Hands-off(DHO)になるだろう。x1がこれを未然に防ぐようボディチェックを行う場合、1はその裏をかいてバックドアを行うことで簡単に得点することが出来る。(実はこれと似た発想で、リピックも有効である。)
jailとは、ボールハンドラーがオーバーで抜けてきた相手を”後ろに背負う”ことで、自分へのDFを不可能にさせるスキルのことである。これにより、事実上5on4のアウトナンバーを作ることが出来る。
jailからさらにヘッジしているスクリナーDFをスクリナーがclearoutすることで、ボールハンドラーにドライブコースを提供するjail clearoutというスキルがある。
スイッチに対して→HITBACK, Slip or “154” ACTION
ガード⇔ビッグマンのボールスクリーンでスイッチさせて、他のプレーヤーにボールを持たせてから、ガードOFvsビッグマンDFの「速さのミスマッチ」にボールを戻して攻めさせるコンセプト。
そのまま攻めさせるのではなく、一旦ボールを他に収めるのは「ビッグマンDFのヘルプDF⇔ボールマンDFの切り替えの遅さを突く」「他のプレーヤーにボールを持たせることで、そのDFを外へと引き出す」という二つの理由の為。
この後、同時に存在する「高さのミスマッチ(ビッグマンOFvsガードDF)」でオフェンスリバウンドを狙うのも重要になる。
Slipは、スイッチDFの弱点となる典型的なオフェンススキル。見落とされがちだが、スイッチに下手に対応すると、スクリーンが設置されて居た側のカバーが薄くなり、ドライブしやすくなるという効果がある。トラップにも有効なコンセプト。
4→1のPNRから、5→1のPNRに移行するプレー。図の通り、二回目のPNRを守るのが比較的鈍重なx4とx5になってしまい、平面のギャップが出来やすくなるという構造になっている。
4. ボールスクリーン関連ムーブ紹介
“Wedge Roll” and “Spain P&R”
スクリナーDFに”あらかじめ”スクリーンを掛けることで、ヘッジを難しくするのがWedge Roll。一方で、”PNRと同時に”スクリナーDFへスクリーンをかけることで、5のロールインないし2のリプレースのギャップを作るのがSpain P&Rである。スクリナーDFにスクリーンを掛けるという発想はどちらも共通する。(PNPにFlareを掛けるというパターンもあり)
Chase
あらかじめオフボールスクリーンを行い、オフボールスクリーンユーザーに、オフボールスクリナーがピックを仕掛ける動き。直前のスクリーンへの対応によって必然的に生じる遅れ・ギャップにより、二回目のスクリーン(PNR)への対応に支障が生じるという構造。
Double Drag (and Double Drag Wildcat)
ボールスクリーンを垂直に二つに並べるプレー。Double Dragに限らず、スクリーンを垂直に並べるプレーは特にスイッチDFを混乱させる。Double Dragの後に1番目のスクリナーへ2番目のスクリナーがオフボールスクリーンをかけるバリエーション(Wildcat)もある。
“Chicago play” and “Rip DHO”
Chicago playは、DHOユーザーがあらかじめAway Screenを貰ったうえでのDHO。
Rip DHOは、DHOユーザーが三人目のプレーヤーにRipを行った後にDHOに向かうプレー。
いずれもスクリーンを絡めてあらかじめ(ユーザーorスクリナーの)ギャップを作り、DHOに向かうという構図。
DHO→PNR and DHO+PNR
どちらもDHOからPNRに展開する動きだが、左はDHOハンドラーがアングルチェンジ・ボールスクリーンを行うムーブで、右は、三人目がボールスクリーンをセットしに行くムーブ。
右は特にダブルボールスクリーンになっているため、スイッチを混乱させやすく、DFを外へ引き出しやすい。
参照サイト・記事
ボールスクリーンをうまく使うための5種類の判断|コーチMのブログ
現代バスケットボールの基本的な動き - 現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)
15種類のオンボールスクリーンディフェンス|コーチMのブログ
Golden State WarriorsのスイッチDFコンセプト - 現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)
スイッチDFの攻略法 / "P&RからPickを取り去る"という革命 - 現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)
より良いボールムーブメントのために / スクリーンプレーの指針 - 現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)
最新NBA戦術紹介① The Clearout - 現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)
How The Celtics Attacked The Spurs Pick & Roll Defense - YouTube
【一般寄稿】ジョン・ストックトンとカール・マローンのピックアンドロールはもう古い! byコーチP | ゴールドスタンダード・ラボ
対エースDFシフト byマイク・ロンガバーディ(Cleveland Cavaliers assistant)
クリーブランド・キャバリアーズでアシスタントコーチを務める(※執筆時点)Mike Longabardiのclinic noteである”Defending the Great Player"を紹介(適宜翻訳)したいと思う。
これは抑えたい相手のプレーヤー(エース)に対し、そのエースのポジションやエリア別の対策DFシフトを紹介・解説したもので、そのまま利用するのはもちろんのこと、こうしたシフトに対してのカウンター戦術を組み立てる上でも極めて重要なノートであると思われる。
vs ポイントガード
①Load to the Ball
x5(5のDF)が大げさなヘルプDFシフトを取ることで、1(エース)からのパスを誘う戦術である。
目論見通り5へとパスされれば、1に対してディナイを行う。
②Load to the Touch
①よりさらに露骨で、1に対するダブルチームを"演出"する。
目論見通り5へパスされたとき、慌てて5へとクローズアウトするのではなく、1へのパス返還をケアしながら近づき、1の絡まないプレーへと誘導する。
③Face to Face
こちらのフリースローの際、相手の1にボールが渡ってプレーがスタートするのを避けたい。そのために、1のマークマンはフリースローの終了時、1をフェイスガードして、(理想的なケースでは)1以外のプレーヤーにボールプッシュさせ、そのまま1へのフェイスガードを続行する。
④Hit
フリースロー後、1(エースPG)にボールが渡った場合、リバウンダー(基本的にインサイドであろう)のうちの一人が"ソフトトラップ"を仕掛ける。この場合、マークマンがフロントへとエントリーしたら、トラップに固執せずにバックする。1に躊躇いを生じさせ、オフェンスリズムを狂わせるのが目的。
vsウィング・アイソレーション
①Big Above
相手のビッグマン(ここでは4/5)がトップでボールを持ち、エースプレーヤー(ここでは3)がウィングに居る時、x3は「コンタクトディナイ」を仕掛ける。コンタクトディナイは、文字通り相手にコンタクトして、リムへのランニングコースに体を入れたままディナイをするプレー。3が(カッティングなどで)ボールを受ける場合も、3が可能な限りリムから遠ざかるように位置を取る。
②Fist Up
ビッグマンDF(x5)がボールサイドのローポストにあらかじめ位置取り、ヘルプサイドコーナーDF(x2)が5をケアする。ボールマンDF(x3)はベース方向へ誘導する。
もしヘルプサイドへボールが飛んだ場合、x4がまずクローズアウトし、もう一人にx2がクローズアウトして(X-out rotation)、x5が5に戻る。
③Fire
ショットクロックが残り少ない時に有用。
ボールマン(エース)をミドル方向に誘導し、トップDFがヘルプすることでトップへとパスさせて、図のようなローテーションを行う。2にボールが渡る場合、x5が2へとローテーションし、5のボックスアウトはx1が行う。
vsエルボー・アイソレーション
①Fist Up
形はほとんどvsウィング・アイソレーションのFist Upと同じで、x5がヘルプポジションを取り、x3がベース方向へ誘導、x1がビッグマンをケア、スキップパスに対してはx4とx1がX-out rotationを行う。
②Fire
これもvsウィング・アイソレーションのFireとほぼ同じ。
x3がミドル方向へ誘導し、x4がヘルプ、パスに対してx1→4、x5→1、x4→5のローテーションが生じる。
vsトップ・アイソレーション
Hit
(x2がエースの2の利き手側に位置取った上で)x5が利き手の逆側へアプローチ、x4がヘルプポジションを取って、x3が4をケア。2にコーナーへの苦しいスキップパスを出させるのが目的。
vsキャッチ&シュート
①Top Lock
Awayスクリーンに対し、マークマンがスクリーン方向にコンタクトして、スクリーンを徹底して使わせないというDFシフト。バックドアに対しては、スクリナーDFがケアする。
仮にスクリナーのシュート力が高い場合は、スクリナーDFはある程度スクリナーに近い位置にポジショニングする必要があるが、スクリナーのシュート力が低い場合は、思い切りスクリナーを離してバックドアのケアに集中して良い。
②Blitz
スクリーンを伴うカットアウトに対し、スクリナーDFもクローズアウトしてギャップを潰し、ダブルチームに近いシフトを作る。この際、ヘルプサイドからの(図のような)ローテーションを素早く行うことが重要で、これがないと4などにイージーショットさせてしまう。
Top Lockでバックドアを誘い、バックドアからのカットアウトに対してBlitzを仕掛けるというのがお決まりのパターンになる。
vsポストアップ(ウィングプレーヤー)
Red
ポストアップしたエース(フォワード)に対してフルフロントを取り、ウィングのボールマンには強いプレッシャーをかける。ポストへパスが出たら、ポストのDFはジャンプしてスティールを狙う。(仮にスティールできる可能性に乏しくても…)
もしポストへパスが通れば、ヘルプサイドからDFがヘルプに向かい、ポストマンにダブルチームを組む。
ポストマンのドリブルに合わせて、ヘルプサイドDF(基本的にはインサイド)がベースライン方向からダブルチームに向かう。ポストマンには決してミドル方向へ行かせない。
ポストDFはミドル側の手でボールを狙い、ベース側の腕で相手の体を触ることでポストマンがベース方向へスピンするように誘導する。
vsポストアップ(ポストプレーヤー)
GOLD
ポストDFがポストマンに対してリムへのコースを体で塞ぎつつ、ボディコンタクトした状態からDFをスタートする。
GLAYと同様、相手のベースライン・スピンを誘いつつ、ベースラインからのダブルチームを狙う。この際、ダブルチームに向かうのはヘルプサイドのDFのうち最も低い位置にいるプレーヤー(ポジションは問わない)。
ポストDFとヘルプDFは、T字を作るように密着したダブルチームを行い、決してスプリットを許してはならない。
※(当たり前のことだが)上述の各種シフトの中でダブルチームを組んだ際、パスが展開された後のセカンドショットをきちんとケアできなければならない。(そこでオープンショットを作られてしまうのは良くない)そのためには、ダブルチームを行っていたプレーヤーの迅速な反応・判断が重要になる。
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ローポストダブルチームの要諦 (From Baseline / Late Double)
今回は、二つの動画をサンプルに、Low Post Double Teamについて考察していきたい。
この動画は、NBAで実際に運用されているBaseline Doubleの編集動画である。
Baseline Doubleが(Middlelane Doubleと比較して)望ましいポイントは主に2つ。
①ポストマンのパスコースを制限できる。
ベースライン方向をケアし、ミドルレーン方向からダブルチームに向かうシフトの場合、ポストマンのパスコースが広く確保されてしまうことになるため、ポストマンに並み以上のパス能力がある場合(そして周りのプレーヤーのスコアリング能力が一定以上ある場合)、容易に得点までつながる危険がある。
一方、ミドル方向をケアし、ベース方向からダブルチームに向かうシフトの場合は、(厳密には図のように完全にヘルプサイドへのパスをシャットアウトできるわけではないが)パスコースを大きく制限でき、ポストの得点を防ぐことと、良いパスを防ぐことをある程度両立できる。
②ポストマンにベース方向へのターンをさせることができる。(ミドル方向へのターンをさせない)
DFシフトの構造上、Middlelane Doubleではどうしてもポストマンにミドル方向へのターンを許す。
それは図の通り、ワイドなパスコースを許してしまうし、ボードを使いやすい分、実はスコアリングもやりやすくしてしまう。
Baseline Doubleの場合は、ベース方向にターンさせるため、パスコースは狭くなり、ボードは使いにくくなる。また、ベースラインが近いため、ポストマンはラインクロスも警戒しなくてはならない。
このように、可能であれば、Baseline Doubleが好ましい。(もちろん、ポストマンvsマークマンの状況次第では、ミドル方向からダブルチームに向かわざるを得ない場合もある。ただし、基本的にマークマンは、ポストマンのミドル方向をケアし、ベース方向のターンを誘導するようDFすべきとなる)
ローポストダブルチームには、大別してEarly DoubleとLate Doubleがある…と言えるだろう。
ポストマン以外の得点力が限定的な場合は、Early Doubleによってパスを選択させるというのも悪くない選択肢かもしれない。
しかし、パスを捌かせた上でそれに応じてDFシフトを組みなおすのはDFに少なくないストレスがかかるし、抑えたいポストマンはたいていサイズの大きいプレーヤーであることがほとんどなので、相手に"良いシュートセレクト"を選ばせてしまうと、抑えたいはずのポストマンにオフェンスリバウンドを取られて結局スコアに繋がってしまうという事態も少なからず起こってしまう。加えて、他のメンバーのスコアリング能力も高い場合は、容易に失点してしまうことになる。
出来れば、相手が「(相対的に強い)ポストマンで攻めたい」と考えるのを逆手に取って、スティール、相手のターンオーバー、ないしタフショットで終わらせるのが望ましい。
そのときに役に立つのがLate Doubleだ。
相手がポストでの1on1を選択したのを見計らって、(基本的にはBaselineから)ダブルチームを仕掛ける…特にターンを狙ってダブルチームを仕掛けることで、相手のターンオーバーを誘ったり、タフショットで終わらせたりすることが出来る。
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