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今回は、所謂ボールスクリーン・モーションについて、その基本趣旨やパターンを題材として記事を書こうと思う。
まず、ボールスクリーン・モーションとは何か?
これはその名の通り、連続するボールスクリーンの中でチャンスを作り出そうとするオフェンスです。基本的な原則は、
・キックアウトからパスを受けた際のシュート。カウンタードライブはOK
・トップからサイドにパスを出した後はコーナーへ切れる
・インサイドプレイヤーが外でボールを受け、チャンスを作れなかった場合はハンドオフ。もしくはウィングにパスして、すぐボールスクリーンに移行する
の3つになります。
当該記事で紹介されているのは、ボールスクリーンからのRoll&Replaceを利用した極めてシンプルでベーシックな形でのボールスクリーン・モーションである。(詳しいところは当該記事を通読して欲しい)
今回解説するのは、各チームの特色を持った、発展的なボールスクリーン・モーションのパターン(Ball Screen Motion Specials)の紹介記事だ。
2 Get
DHO+PNRからサイドチェンジ → サイドチェンジした先でもDHO+PNR → ボールスクリナーの5がオフボールスクリーンをかけて、最後に4にオープンで持たせる(Throwbackの形)。(DHO+PNR、Throwbackといったムーブメント用語についてはこちらの記事を→現代バスケットボールの基本的な動き)
Backdoor
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → DHO Reject (Backdoor)から、二人目もさらにBackdoor
このパターンは後半で”Backcut the switch-denial”という形で再紹介するが、掻い摘んで要点を言うと、一人目のBackdoorをスイッチで対応してきた際に、二人目のBackdoorでさらに裏をかくという構造になっている。
Chest
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → ウィングのバックドアとコーナーからウィングへのリプレース(Backdoor&Replace) → Floppyに移行。
現代バスケットボールの基本的な動きのFloppyの項でも示したように、この場合シューターはどちらのサイドへSpot upしても良い(もう片方はそれに合わせて逆側へ)。
Cross Screen (Cross Screen / Down Screen)
ウィングにパスしてヘルプサイド・コーナーへカットアウト → ボールスクリーンからサイドチェンジ → Backdoor&Replace → Cross Screen / Down Screen (STS)
ボールスクリーン・モーションから、伝統的なCross Screen / Down Screen型のSTSアクションに移るプレー。
Flare
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → DHO (ヘルプサイドではウィングとコーナーの位置交換) →再びサイドチェンジしてボールスクリーン & ヘルプサイドでFlareをセット。
二度のサイドチェンジでDFにストレスを掛けつつ、Flareに際してミスディレクションになるようにデザインされているプレー。
Floppy
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&Replace → ボールスクリーンからのFloppy
Backdoorした3がFloppyアクションを通じて再びウィングにSpot upしてくるプレー。Backdoorからのカットアウトを予想しがちなDFの虚をつくものであり、2と5のボールスクリーンとも同時並行であるから守り辛いものになっている。
Gonzaga Comeback
ウィングにパスしてからヘルプサイド・コーナーにカットアウト → ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&Replace (Backdoorした3はヘルプサイド・コーナーへカットアウト) → ボールスクリーンからトップの4経由でロールした5に入れる。
Dropディフェンスやショウディフェンスなどによって、x5 (5のマークDF)による5のロールへの対応が遅れ、5に深い位置でのSealを許してしまいがちなのを利用したプレー。
Gonzaga Double
ウィングにパスしてヘルプサイド・コーナーへカットアウト → ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&Replace (Backdoorした3はヘルプサイド・コーナーへカットアウト) → Double Drag
ボールスクリーン・モーションからDouble Dragに移行するプレー。4と5の初期配置に合わせて、先述の"Gonzaga Comeback"と使い分けるのが重要になりそうだ。
Loop
エルボーにボールを入れてからハンドオフ (その間にボールサイドコーナーの3はヘルプサイド・コーナーへカットアウト) → DHO+PNR → 5のRoll & 4のReplace
Luke Option
ウィングにパスしてヘルプサイド・コーナーへカットアウト → ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&Replace → Cross ScreenとDown Screenを4が選択。
先ほど紹介した"Cross Screen (Cross Screen / Down Screen)"と基本構造はほぼ同じで、クロススクリーン・ユーザーがダウンスクリーンを選択するオプションが追加された形と理解すると良い。(それもまた、伝統的なCross Screen / Down Screen STSアクションの典型的な派生形ではある)
Misdirection Double
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&ReplaceからのDHO → Backdoorした2に対するDouble Stagger
典型的なボールスクリーン・モーションの形から、Backdoorから逆方向に切り返してDouble Staggerを使うという、まさに文字通りMisdirectionの要素のあるStaggerセット。
Rip (Misdirection Rip)
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&ReplaceからのDHO → Backdoorした2に対するDouble Staggerをセット → 2が4に対してRip
先述の"Misdirection Double"のWrinkleにあたる。Staggerをセットしつつ、StaggerスクリナーにRipを仕掛けて相手の虚を突く形は昨今割とCommonになりつつあるので要注意。
また、動画にあるように、2がRipの後に5のスクリーンを貰う形(RipからのSTS)にも発展する。
Misdirection Step-up
サイドチェンジからのウィング・コーナーの位置交換 → ボールスクリーンからのサイドチェンジにStep-up (Weakside Step-up) を組み合わせ
ボールスクリーンやDHOからのサイドチェンジ → Weakside Step-upという形は、極めてシンプルでありながら守り辛いので、極めて多くのチームで採用されているオフェンスコンセプトである。
NZ Rip (New Zealand Rip)
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&Replace → DHO+PNRにRollへのRipをセット → RipスクリナーへのSTS (ボールスクリナーの4によるSTSなので、Throwbackの要素もある)
DHO+PNRのRollにRipを仕掛けるという点は、発想はSpain P&Rに似る。そこにさらにSTSをセットするというかなりHigh Designedなプレー。
Backdoor&Replace → ボールスクリーンからリジェクト・ドライブ → ボールスクリナーの4が、先ほどBackdoorした3にスクリーンをセットして3にReplaceさせる
通常この形のリジェクト・ドライブに対しては、素直に4がポップしてReplaceすることが多いのだが、それをあえてBackdoorした3にReplaceさせるところが特色。
Shallow BS
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → 4がドリブルでトップからウィングへ、それに合わせて2がウィングからトップにReplace → トップの2に戻してWeakside Step-up
素直に4と3のDHOになると思わせておいて、トップに戻してStep-upを行うというミスディレクションの要素が特長。
Shallow Flare
ボールスクリーンからのサイドチェンジ →4がドリブルでトップからウィングへ、それに合わせて2がウィングからトップにReplace → 2のトップへのReplaceに合わせて、5がFlareをセット
先ほどの"Shallow BS"のWrinkleにあたる。x2 (2のマークDF)が2に対してタイトに付いていたら"Shallow BS"、x2が2を離してヘルプ重視のスタンスを取っていたら"Shallow Flare"が有効になるという構造だろう。
ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&Replace → Replaceした3にパスしてから、Backdoorした2によるUCLAスクリーンセット → 2のポップにパスしてStep-upに移行
x2が5のUCLAカットをワンケアしなくてはならない関係上、その次のStep-upへの対応に遅れが生じる構造。
余談になるが、このプレーのように、UCLAスクリナーにアウトサイド、UCLAユーザーにビッグマンを置く形はかなりCommonなものになりつつある。基本的にビッグマンをダイブさせた方が効果的であることに加えて、仮にスイッチが発生したときに、ペイントにサイズミスマッチ、アウトサイドにスピードミスマッチが迅速に作れるからである(スクリナーとユーザーが逆だと、ペイントにスピードミスマッチ、アウトサイドにサイズミスマッチが出来ることになり、ミスマッチを攻めるのが難しくなってしまう)。
サイドチェンジ → ボールスクリーンからサイドチェンジ → Flare Screen → FlareユーザーにパスしてからUCLA
厳密には、2が素直に5にUCLAスクリーンをセットするというより、Flareスクリーンをセットした状態をキープして、いわばScreen your own man気味にステイしつつ5のダイブをアシストする形。(Screen your own manなどのスイッチDFアタッキング・コンセプトについては、スイッチDFの攻略法、及びスイッチDFの攻略法 追加をどうぞ)
x2による5のダイブのケアを許さないので、5のダイブに比較的オープンでパスが通りやすいという構造になっている。
V
ウィングにパスしてヘルプサイド・コーナーへカットアウト → トップにパスしてからDHO Reject (Backdoor) → 元のサイドへリターンし、BackdoorしたプレーヤーにFlareをセット。
Backdoorしたプレーヤーに逆方向へ切り返させて、そこにスクリーンをセットするという発想は、先述の"Floppy"や"Misdirection Double"と共通するものがある。
(なお動画では、先述の"Backdoor"のパターン、つまり2人のBackdoorが発生するパターンからの"V"が紹介されている)
Weak Pin
DHO+PNRから、ウィークサイド(ヘルプサイド)のPindown (Away) へとパスを出すプレー。
DHO+PNRに対してヘルプポジションが組まれていることを利用して、シンプルなPindownを効果的に攻めるというコンセプト。
Whip Post
サイドチェンジしてからウィングとコーナーの位置交換 → ボールスクリーンからのサイドチェンジ → Backdoor&Replace → Replaceした1経由で、Backdoorした2のPost Sealにボールを入れる。
アウトサイドプレーヤーのPost Sealを容易に狙える構造。
※
「ボールスクリーンからのサイドチェンジ」が多くのプレーで頻用されているが、このサイドチェンジをディナイすると、ボールスクリーンに対するローテーションが厳しくなるので、高い位置までディナイは基本的には発生しない。
このため、レシーバーが十分に高い位置にポジショニングしている場合は、ボールスクリーンからのサイドチェンジやDHOからのサイドチェンジは大抵は安全に通ることになる。
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ボールスクリーン・モーション対策としてのDive SwitchというDFコンセプトの紹介。
ボールスクリーン・モーションでは、既に前半で見てきたように、以下の様な形から『ウィングのBackdoor&コーナーからウィングへのReplace』というアクションを起点にしたオフェンスが展開されるパターンが多い。
上図のように、Backdoorに対して無策だと、Backdoorに簡単にパスが通ったり、コーナーからReplaceしてきたプレーヤーがワイドオープンになってしまったりする。
これに対して行われるがDive Switchである。
図のように、ベースライン側のDF(low guy)がダイブをケアし、コーナーからウィングへリプレースしてくるプレーヤーには、ウィング側のDF(”high” defender)がマークする。
これによって
・ベースライン側のDF(low guy)は、ウィークサイド(ヘルプサイド)のリム周辺のヘルプスポットをより長くキープすることが出来る。
・ウィング側のDF("high" guy)は、ディナイの継続によって相手のオフェンスタイミングを混乱させることが出来、ICEなどを用意するだけの猶予を作れる。(ICEといったボールスクリーン系用語については、拙記事「ボールスクリーン」及び当該記事の参考リンクをご覧いただくと良い)
尚、Dive Switchに対しては、以下のように「リプレースしてきたプレーヤーのさらなるバックカット」がカウンターコンセプトとして存在しており、これについては特別に警戒する必要がある。
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