PNR関連Togetter紹介……『'short' PNR』、『Houston Rocketsから学ぶボールスクリーンの掛け方』
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今回は、PNR(ピック&ロール)関連の拙togetterを紹介していこう。
上記togetterはCoach Liam Flynn (@coachliamflynn)による『'short' PNR』についての一連のツイートをまとめたものだ。
'short' PNRとは、PNRの際、ボールスクリーンをしない方の(シュート力の低い)ビッグマンが、ボールサイドの"ダンクポジション"(ショートコーナー辺り)に移動し、スクリナーがロールするスペースを作るコンセプトのことを指す。
一部ツイートを抜粋していこう。
Whilst it's much easier to play the Pick and Roll when your non-screening big can shoot the ball, what happens if he/she can't? Seen a bunch of teams 'shorting' the PNR lately, meaning they place their non screening big (who can't shoot) in ballside dunker position. See here: pic.twitter.com/yl7OXTTfZ6
— Coach Liam Flynn (@coachliamflynn) January 28, 2019
拙訳:『スクリナーでない方のビッグマン(non-screening big)にシュート力があればピック&ロールは簡単になるが、シュート力がない場合はどうなるだろう? 以下で複数のチームの'shorting' PNRを見ていこう。これは(シュート力のない)スクリナーでない方のビッグマンがボールサイドのdunker position(※ショートコーナーあたり)に位置取るプレーのことである。これを見てほしい』
Non screening big (who is a nonshooter from 3pt) goes to ballside short corner
拙訳:『(3Pの打てない)スクリナーでない方のビッグマンはボールサイドのショートコーナーへ向かう』
With the non screening big placed on the ballside in an attacking position close to basket
拙訳:『スクリナーでないビッグマンはボールサイドでバスケットに近い攻撃的位置(attacking position)に位置取る』
And a shooter spacing the floor on the same side as the roller
拙訳:『シューターはローラーと同じサイド(※コーナー)に位置取る』
...the defenders are forced to be accountable to their match up
拙訳:『...DFはそれぞれのマッチアップへのケアを強いられる』
Therefore a pocket is created for the screener to roll into
拙訳:『このため、ロールしたスクリナーのためのスペースが生まれる』
Here's another example from @BasketballCL team, @JerusalemBasket. You can see the non-screening big works in tandem with the screening big - he cuts along the baseline as the Mid PNR occurs. This opens up the pocket for @Amareisreal to roll into. pic.twitter.com/G4uXI0iAdp
— Coach Liam Flynn (@coachliamflynn) January 28, 2019
拙訳:『こちらは @BasketballCLのチーム、@JerusalemBasketからの一例だ。スクリナーでない方のビッグマンがスクリナーのビッグマンと連携し、ミドルPNRの発生に合わせてベースライン沿いをカッティングしているのがわかるだろう。これにより、@Amareisreal がロールするスペースが生まれた。』
As the Mid PNR is being played up top...
拙訳:『トップでミドルPNRが発生した際...』
...Non screening big circles to ball side short corner...
拙訳:『...スクリナーでない方のビッグマンがボールサイドのショートコーナーに入る...』
This opens up pocket for screener to roll into
拙訳:『これにより、スクリナーがロールするスペースが生まれる』
Low defender is late on rotation and fouls
拙訳:『DFはローテーションが遅れ、ファールしてしまう』
In this example, the defender of the non-screening big helps on the roller, opening up an easy dump pass for a dunk. Great read from @taethomas35 (non screening big) to anticipate the re-screen coming back his way (since the guard on the ball went under first PNR) and stay put. pic.twitter.com/h4zIrEL2od
— Coach Liam Flynn (@coachliamflynn) January 28, 2019
拙訳:『この例では、スクリナーでない方のビッグマンについていたDFがロールに対してヘルプに出たので、スクリナーでない方のビッグマンがオープンになり、簡単なダンプパス(※ダンプパス、ないしダンプ・オフ・パスは、ゴール付近でのアシストパスのこと)とダンクが生まれた。@taethomas35(スクリナーでない方のビッグマン)の読みが素晴らしく、彼は(ボールマンについているガードが最初のPNRをアンダーしたので)リ・スクリーンが発生することを予測して引き返し、同じ場所に留まった。』
The guard playing the PNR also has the option to pass directly to the non-screening big who is hiding in the short corner if the defence makes a mistake. See this @Pacers clip, the D on the non-screening big rushes up on the roller opening up a dunk for @leafsquad22 #NBATwitter pic.twitter.com/yLSDMtPtgR
— Coach Liam Flynn (@coachliamflynn) January 28, 2019
拙訳: 『PNRを行っているガードは、DFがミスした際に、ショートコーナーに隠れているスクリナーでない方のビッグマンへ直接パスするという選択肢も併せ持っている。この@Pacersのクリップを見てほしい。スクリナーでない方のビッグマンのDFがロールのケアに向かったことで、 @leafsquad22(※スクリナーでない方のビッグマン)のダンクがオープンになった。』
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これはHouston Rockets Spread Pick & Roll - YouTubeを題材に、ビッグマンによるボールスクリーンの掛け方についてピックアップしたtogetterになる。
①ハンドラーDFの”裏側”にスクリーンをセットするBottom Half
②バックコートからのボールプレッシャーに対して高い位置にフラットスクリーンをセットするHigh Flat
③ハンドラーDFのスタンスに合わせて角度変更する"flip"
④ハンドラーのペネトレイト成功に合わせて(ハンドラーDFを引っ掛けずに)早めにロールするEarly Roll
という4つのコンセプトをまとめている。
【追記(2019/5/12)】
この4つのコンセプトに関する動画を作成したので、ぜひ一度ご覧いただきたい。
→ Ball Screen 4 Basic Skills - YouTube
ツイートを適宜抜粋していこう。
①Bottom Half
ファストブレイク記事 https://t.co/hGNSk71gM8 で紹介したダントーニのクリニックノートにも書かれていたことだが、ハンドラーDFにオーバーを強制し、2on1をスムーズに作るために、スクリナーがハンドラーDFの"裏側"(Bottom Half)からスクリーンを掛けることを推奨している。以下はその一例。 pic.twitter.com/Ny9quYfMcp
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 14, 2019
これはかなり重要な場面で、最初カペラがLateral(横側)にスクリーンを掛けていたのを、一旦間を置いてBottom Halfに修正させてアタックしている。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 14, 2019
これにより、一層確実に2on1に移行している。 pic.twitter.com/JqxnQWjrxj
Bottom Halfの掛け方として、ハンドラーと少し離れたところにセットする、というパターンもある。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 14, 2019
近い位置にBottom Halfをセットすると、ハンドラーDFが比較的ファイトオーバーしやすい。
しかし、やや離れた位置(斜め下あたり)にBottom Halfをセットすると、ファイトオーバーは困難となる。 pic.twitter.com/kAmcr1kFHd
Dragをする際にハンドラーより後方からスタートした場合も、きちんとハンドラーより十分に前方まで回り込んで、丁寧にBottom Halfからセットする。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 14, 2019
HOUのビッグマン達にはこの原則がかなり強固にシェアされている。 pic.twitter.com/8VQUjzkb7Z
なお、十分に3Pラインに近くて、相手が最初からアンダーを行う可能性が低い(オーバー、ないしファイトオーバーを狙ってくる可能性が高い)場合は、Bottom Halfではなく、映像のようにLateralを選択することになるので、この使い分けは必要。 pic.twitter.com/Uu6VL0WH8u
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 14, 2019
ポイントをまとめると、
・ハンドラーDFの裏側("Bottom Half")にボールスクリーンをセットすることで、ハンドラーDFにオーバーを選択させ、2on1を作ることが出来る。
・Dragなどでスクリナーが後方からエントリーする場合も、ハンドラーDFの背後までしっかり回り込んでから、Bottom Halfにスクリーンをセットする。
・Bottom Halfにスクリーンをセットする際、少し離れた場所にセットすることで、相手のファイトオーバーを抑止できる。
・ハンドラーが3Pラインに近く、DFがそもそもアンダーを選ばなさそうな場合は、Bottom HalfではなくLateral(横側)にセットする方が好ましい。
②High Flat
ハンドラーがバックコートからピックアップされたり、プレッシャーを掛けられている場合は、映像のように、センターライン近くまで上がってきてFlat Screenをセットすることで、極めて迅速に有利盤面を作り出すことが出来る。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 14, 2019
このコンセプトを、私は便宜的に"High Flat"と呼んでいる。 pic.twitter.com/dVIAIS5OHD
これも"High Flat"の一例。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 14, 2019
ハンドラーDFが一人だけでハンドラーへプレッシャーに来るDFの場合、このHigh Flatの餌食になりやすいとまで言えよう。
High Flatをセットしていたカペラが迅速にターン&ダイブして、フィードやプットバックに対応しているところも地味に重要ポイント。 pic.twitter.com/wluRmsLVRQ
このHigh Flatは、センターラインはおろか、(DFの視野狭窄を利用しつつ)バックコートでセットされている。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 15, 2019
Flat Screenは、仮にアンダーされてもハンドラーDFとのFoot Raceで優位に立てる(参考→「アンダー対策としてのフラットスクリーン」 https://t.co/G2qGQCnWrx )ので、こういった状況に有用。 pic.twitter.com/eorD4On1lh
ポイントをまとめると、
・ハンドラーDFがバックコートから(一人で)プレッシャーをかけてくる場合、高い位置にフラットスクリーンを仕掛ける("High Flat")ことで、簡単に2on1を作れる。
・仮にアンダーされても、ハンドラーがFoot Raceの面で有利になる。
・スクリナーは迅速にターン&ダイブ(ロール)して2on1を作り、パスのレシーブやプットバックを狙う。
③”flip”
次に"flip"(スクリーン角度変更)というコンセプトを見ていこう。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 15, 2019
最初に掛けたスクリーンに対して、(アイスやファイトオーバーのために)スクリーンの上を回られる場合、映像のように迅速にスクリーンの角度を変更することで、より有利な2on1に移行可能になる。 pic.twitter.com/DT9HcYkPrA
Wedge Roll(スクリナーがあらかじめオフボールスクリーンを使ってからピックに向かうプレー)からの"flip"。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 15, 2019
ハンドラーがドライブを始めるタイミングが重要で、スクリナーの角度変更に対して遅すぎず、早すぎず。
(遅すぎるとハンドラーDFが対応しやすいし、早すぎるとスクリナーがファウルになる) pic.twitter.com/1bJFkCNgl9
ポイントをまとめると、
・アイスやファイトオーバーといった、スクリーンの上を回ることでボールスクリーンを無効にしようとするDFに対しては、スクリーンの角度変更("flip")を行うことでハンドラーDFをより確実に引きはがすことが出来る。
・”flip”に対してハンドラーのドライブが遅すぎるとDFが容易に対応できてしまうし、ドライブが早すぎるとスクリナーのファウル(イリーガル・スクリーン)になってしまうため、角度変更に対するドライブのタイミングが重要になる。
追加の関連togetter:ピック&ロール…ファイトオーバーに対する”flip”(スクリーン角度変更) - Togetter
④Early Roll
次に取り上げるのは、「"P&RからPickを取り去る"という革命」 https://t.co/VqoPJLwkna でも紹介したEarly Roll。(他にも https://t.co/CzMLvIyjbl など参照)
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 15, 2019
スクリーンに当てる(Hit)ことに固執せず、ハンドラーDFにオーバーのスタンスを取らせたなら、即座にロールに移ることで優位を作れる。 pic.twitter.com/XHi1CKMp79
ハンドラーDFがオーバーのスタンスを取れば、スクリナーがハンドラーDFを引っ掛けなくてもハンドラーがそのままペネトレイトできるので、迅速にEarly Rollすることが望ましい。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 15, 2019
下映像は、Early RollによってコーナーDFによるtagを強要し、コーナーへのスキップパス&3Pとなったパターン。 pic.twitter.com/M44LHE13Lc
Early RollからのRoll&Replace。(Single Side Bump Actionとも。詳しくは→ https://t.co/hGNSk71gM8 )
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 15, 2019
スクリーンは仮に掛からなくても、ハンドラーDFにこのスタンスを取らせた時点で戦術的目標を達成出来ているというわけだ。 pic.twitter.com/2aowotlcoP
ポイントをまとめると、
・ハンドラーDFがオーバーを選択した時点で、スクリナーはハンドラーDFとのボディコンタクト(”Hit”)に固執せず、迅速にロールする(”Early Roll”)のが好ましい。それによって相手のDFに対して速度的・タイミング的に優位に立てる。
・Early Rollに直接パスが入るのが最も好ましいのは当然として、Early Rollに対応させた上でのスキップパスなども有効になる。
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【追記:2019/2/28】
これはデアンドレ・ジョーダンとドワイト・パウエルという二人のプレーヤーを題材に、DFを攻略するにあたって機能しない悪いピックとは何か、逆に攻略に機能する良いピックとは何かについて考察したtogetterである。
ツイートを引用していこう。
DALから移籍したDJですが、
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
・DJのピックは微妙
・逆にパウエル(ドワイト・パウエル)のピックは上手い
という話をしたいと思います。
まずはDJの以下のシーン。
最終的にはRe-Screenでズレは作れていますが、最初のピックはダニー・グリーンに完全にファイトオーバーを許してしまっています。 pic.twitter.com/FCdcYDsgeJ
このDJのピックも、レナードにファイトオーバーを許してしまっており、スクリーンをセットする位置や角度(特に位置)に問題があると言えます。(いかにダニー・グリーンやレナードのDFが上手いとはいえ......) pic.twitter.com/u6aHBR0GGg
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
このDJのボールスクリーンもよくありません。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
『ピック&ロール…ファイトオーバーに対する”flip”(スクリーン角度変更)』 https://t.co/hbeEGwtfxF で紹介したように、この場合はハンドラーDF(レナード)のスタンス変更に合わせて迅速に"flip"すべきです。 pic.twitter.com/X2GKJIJXQ4
似たようなシーンでパウエル(ドワイト・パウエル)はどうしているかというと、https://t.co/tmiJCOotPLのように、スタンス変更に合わせた"flip"をそつなくこなしています。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
少し距離を空けてファイトオーバーさせづらくするという繊細な調整まで行っています。
このパウエルのピック(ボールスクリーン)も注目です。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
①適切な距離をとりつつ
②Bottom Half (DFの裏側)から
スクリーンをセットすることで、ハンドラーDFのファイトオーバーを阻止しています。 pic.twitter.com/4jEwXACwEK
このパウエルのピックも、
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
①適切な距離・位置
②適切な角度(Bottom Half)
が揃っており、これにより相手のDFを崩しています。
これらを総合すると、DJのスクリーンの拙さに比して、パウエルのスクリーンの上手さ(というより、そつのなさ)が目立つという印象です。 pic.twitter.com/J1fUpS7f5N
ポイントをまとめると、
・悪いピックの特徴は、「適切な距離が取れていない=密着しすぎており、ハンドラーDFに簡単にファイトオーバーを許してしまう」、「ハンドラーDFのスタンス変更に合わせたスクリーンの(迅速な)角度変更が出来ていない」。
・裏を返すと、良いピックの特徴は、「適切な距離が取れており、ハンドラーDFに安易なファイトオーバーを許さない」、「ハンドラーDFのスタンス変更に合わせた迅速な"flip"が遂行できている」。(加えて、「適切な角度=Bottom Halfにセットして、ハンドラーDFのファイト―バーorアンダーを抑止している」ことも重要)
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(以上)
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