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これまで、トランジション・”オフェンス”に関してはいくつか記事紹介や記事執筆を行ってきた。
今回はトランジション・"ディフェンス"に絞って、記事紹介を行っていく。
- Defending Disadvantage Situeations
- Defensive Transition: Everything You Ever Wanted to Know About
- Coach LemanisのトランジションDFコンセプト
- Chris OliverのトランジションDF原則
- 個人的まとめ:
Defending Disadvantage Situeations
トランジション・ディフェンスにおける不利な状況(主にアウトナンバー)についてのコンセプトをまとめてある記事。興味深い部分を抜粋要約していく。
1v0の状況下でのディフェンスの鍵
・"ウルフ"(Wolf) - 後ろからドリブラーを追いかける。
・スプリントで戻ってプレーに復帰!"ディフェンスに遅すぎることはない"
・近い方の手で、ボールの低い位置でのショットブロックを狙う。
・オフェンスが得点すると思ってはいけない! リバウンド! バックボードを通り越さない!
・後ろからドリブラーを捉えてシュートをブロックしたり乱したりすることは勢いを変えるプレー。
1v1 Wolfドリル
図の通り、ベースラインからパスしてハンドラーを追いかけるWolfのドリル。
オフェンス:DFが遅れているならレイアップ、横までついてきたらStride Stop、前に回られたら1on1シチェーション
ディフェンス:近くの手&低い位置でブロックを狙う、深追いは避ける、バックボードを越えないようにしてリバウンドを取りに行く
(行き帰りでOF/DF入れ替わり)
2v1のディフェンス
前提として、ターンオーバーに対してはスプリントバックからWolfを狙う。
DFの不利な状況は2、3秒以上続いてはならない。
上記前提の上で、2vs1の状況におけるDF:
Stunt & Retreat (Frame 1):
・『時間稼ぎ』("Buy time")
・オフェンスが余計なドリブルやパスをするごとに、ディフェンダーがよりたくさん戻ってこれる。
・ドリブラーを食い止め、スタントしてから下がる。ボールにアプローチしない。
Play the Pass (Frame 2):
・ドリブラーは、DFにつかれる前にパスすることが多い。
・Stuntでパスをわざと出させて、それを読んでパス先をディフェンスしに行く(Play the Pass)。
Take a Charge (Frame 3):
・多くの場合、ドリブラーはパスした後、そのままの勢いでリムに走ろうとするので、そこでパスした後にテイクチャージを狙える。
2vs1 with help (Frame 4):
・ヘルプ(Wolf)がパスレーンに復帰するまで、ボールに着かずに時間稼ぎする。
・Wolfは自分より後ろのオフェンスを気にする必要がない。ボールか、ボールより前の地点まで到達することでようやくディスアドバンテージを解消出来る。
Weave into 2v1
実際のドリルのビデオ
3v2のディフェンス
残りのチームメイトがDFに戻れるよう時間稼ぎする基本は2v1と同じ。
このために、一人はボールを止め、もう一人はリムを守る『縦並び』("Tandem")が必要となる。
横並び(side-by-side)は厳禁
BallディフェンスとLowヘルプの分担:
FTLE(Free Throw Line Extended、フリースローラインを伸ばした想像の線)より上へのパスならBallディフェンスはそのままマーク。
FTLEより下へとパスされたら、Lowヘルプがボールを見て、元のBallディフェンスがLowヘルプと入れ替わってヘルプポジションに入る。(”Bottom up, Top down”)
その他のポイント:
・パスした後に真っ直ぐリムへ走るオフェンスを狙ってテイクチャージ
・Bottom up, Top Downの意識でDREBをきっちり内側で抑える
・DREBからのカウンターアタックで数的優位を逆転する。
(補足:Low Iは、ペイントをIの字に見立てて、ベースライン側のヘルポポジションのこと。翻ってHigh Iは、ペイントをIの字に見立てて、ネイル付近のヘルプポジションのこと) 参照:Disruptive Pressure Defense Ernie Woods
3v2v1 ドリル
上図のような形で、行きに3vs2を仕掛け、シュートを打ったプレーヤーがセーフティーに戻る形で、帰りに2vs1になるドリル。(シュートを打たなかった残りの2人のプレーヤーはハーフラインまで戻って折り返す)
慣れてきたら、帰りの2vs1がハーフを超えた段階で次の組が開始することで回転が早まる。(個人的補足:2vs1を避けながら走らなければいけないのでちょっと危ない感じもするが)
付記:
コーチは、選手がこうした不利な状況でのDFを知っていると決めつけてはならない。
きちんとTips(ヒント)を与えて、強化指導すること。
そして、そもそも不利な状況を発生させた悪いプレーを「払拭」(eraser)するマインドセットを持つこと。
良いオフェンスは、発生させた優位(ディフェンスから見たら不利)を異なる優位へと転換するようオフェンスしてくるものであり、その対策として上記アイデアやドリルが役に立つ。
不利な状況をより多く止めれば、より多くのポゼッションと勝利を得られる。
Defensive Transition: Everything You Ever Wanted to Know About
・トランジションディフェンスにおいて重要なのは、オフェンスリバウンドのルールをどうするかということ。これはコーチが決定して指導しなければならない。
・トランジションディフェンスにマークマンはない(Anybody has anybody)ので、マークマンに固執してはならない(You don't run to your check)。トランジションDFは緊急事態(Scramble Situation)なのである。
ドリルの運用について(Chris Oliverコメント抜粋要約)
コーチングのときは、まずドリルを説明して、ドリルをある程度やらせてから教示ポイントを説明する方が良い。フィジカルな練習が選手を上達させるのだから。
また、一度に全てを教えるのではなく、重要な一つのことを教えて、実行させ、その後の応用は選出たちに任せる。
Coach LemanisのトランジションDFコンセプト
1. Cover the Ball
・出来るだけ早くボールマンをピックアップ。
・出来る限りスローダウンさせ、かつサイドレーンに寄せる。
・ボールマンに責任を持ち、安易にボールにアプローチせず、きちんとボールのフロントを保ち続けること。
2. Basket
・二番目に重要なのはバスケットをカバーすること
・特に、バスケット付近のDFは、全体の目となって指示を行う。
(個人的補足:これはハーフDFでも当然そう。最後尾のDFは常に一番盤面が見えているはずなので、的確な指示を出す義務がある。)
3. Nail Spot
・ネイル(フリースローラインの半円)にカバーDFを置く。
(個人的補足:後のオリバーのまとめでもそうだが、やはりトランジションDFはネイルにカバーを置いて内側に寄せるのが妥当との見解。私もこの見解には賛成で、①カバー&ローテーションの態勢が整っているハーフDFではノーミドル原則でサイド方向に寄せ、②ローテーション態勢が整っていないトランジションDFではノーベース原則でミドル方向に寄せる、というのが方針として妥当と感じている)
Chris OliverのトランジションDF原則
1. Get to the Ball
・ボールマンを捕まえてミドルに寄せる(*OliverはNailのことをSlantと呼んでいる)
・ボールマンには詰めすぎず、ボールにアプローチするフリだけはしながらスローダウンさせる。
2. Cover the Backet
・ポストに戻ってくるプレーヤー(post back)は、最初のセーフティ(get back player)を解放してリムカバーにつく。
・post backは、中央の走者(いわゆるトレーラー)とポストプレーヤーの走り込みを責任を持って守る。
・ただ走りこんでくるオフェンスを待つのではなく、オフェンスの行きたいポイントへ行かせないように体を当てて妨害する。
3. Fill the Slant
(Slantは、Chris Oliverの用語法ではネイルのこと)
・ネイル/スラントのプレーヤーは、ボールマンがコート中央をSplitで突破するのを防ぐ。
・ボールマンより深い位置を取り、ボールに取りに行くフリをしてスローダウンさせる。
・トランジションでは主にミドルレーンで混雑が生じるので、ミドルに寄せるのが理にかなう。
・致命的なパスは、ボールサイドウィングに通される縦パスなので、こちらを防ぎたいのもある。
4. Deny the Ballside Wing
・ボールサイドウィングへの縦パスをディナイ。ミドルに寄せるルールなので、ボールサイドウィングからのヘルプも不要。
・サイドレーンを縦パスで突破されるよりも、ミドル方向へのドリブルを誘導する方が、スローダウン出来るし、致命的なクイックパスも通されにくい。
5. Cover the Weakside (The Get Back)
・セーフティ(Get Back Player)は、戻ってくるポストプレーヤー(post back)の復帰までの間リムを守る。
・post backが来た後もヘルプポジションを動かないでいると、マークすべき逆サイドウィングがワイドオープンになってしまうので注意。
・Chirs OliverはGet Back Playerを常に指定するシステム(通常はポイントガード。ポイントガードがOREBに強い選手の場合はコミュニケーションして他のプレーヤーにする)。Get Back Playerはどの位置にいても、シュートを打った場合もGet Backを担当する。
・Get Back以外のプレーヤーは、OREBが取れそうにない、Get Backの位置が悪い(深すぎる)場合にはOREBに行かない、といった判断が必要。
(個人的補足:個人的には、セーフティをあるメンバーに固定するシステムは、そのプレーヤーのオフェンスの選択肢を減らしてしまう [例えば、リムアタックしづらくなるのでは?] ように感じてしまうので、セーフティー役は盤面に応じて流動的にするのが妥当のように思える。)
付記:
トランジションDFは大抵混乱しているので、往々にして完璧にはならない。
そういう事情もあって、緻密なブレイクダウンをやるよりも、実戦形式の4on4や5on5の繰り返しの中で、コーチングポイントを見つけて指摘するスタイルが効果的。
個人的まとめ:
・1v0、2v1、3v2での遅れたDFの復帰('Wolf'コンセプト)の指導は特に重要。
・オフェンス的にも、Wolfを意識したフィニッシュ・スキルは役に立つ。
・バックボードを通り越さない(シュートが落ちると信じてDREBを抑えに行く)というのは、当然のようでなかなかできないので指導の価値あり。
・パスした”後”のオフェンスからテイクチャージを狙うという発想は正直なかったので勉強になった。確かに漫然とリムに走り込む習性のあるオフェンスもいるので、タイミングや位置関係次第では全然狙えるプレーである。
・3v2のBottom up, Top Downの発想は普通に大事でかつ使える。FTLEを基準に入れ替わるというルールも明快で使いやすい。
・トランジションDFは(ハーフDFとは逆に)ミドル寄せの方が良いのでは、というのは直観としてあったが、海外のコーチでも似た考えでのDFシステム運用があったという事実は心強い。
・サイドレーンのパス突破を防ぐ(ボールサイドウィングのディナイ)という話はAaron Fearneのクリニックでも出てきたらしく、トランジションDFのキーポイントの一つになるだろう。
(以上)