現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

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基本ムーブメント、セットオフェンス、DFシステム、ゾーンアタックなどを日々研究・解説しています。

2020-21 NBA Final PHX vs MIL レビューまとめ

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正直言って、色々と思うところがあったファイナルだが、ここでは虚心坦懐に、Twitter/togetterで論じたそれぞれのゲームレビューとまとめを記録しておく:

 

 

Game 1

togetter.com

PHX vs MIL Game 1 総評

・PHXはvs Lopez、次点でvs Portis、スモールラインナップ相手では苦しみつつも一応vs Connaughtonと、Match Up Makingを徹底する一方で、MILは何処で、誰が、誰を攻めるのかがイマイチ伝わってこないゲームメイクだった。

・MILはPHXのMUM攻勢に対して4QにSmall Ballを突き通すことである程度誤魔化せていたが、昨年にマギーとハワードを封印したLAL [vsHOU] と同じようなローテを組めるとは考え辛い。LopezやPortisを出しながらMUMをある程度封じる手札が必要(Hitとか、最悪Zoneとか)だが、MILにそれはあるのか?

・PHX的には、MUMの組み合わせは(Small相手でも)ある程度決まっているのでそこを突き通すとして、MILはShow & Returnや事後的なDouble Team('Hit')で誤魔化すとかの手立てが居るし、オフェンス戦略も徹底する(例えばもっと執拗にCP3を狙うとか)などかなり大きな改善が必要。

 

 

Game 2

togetter.com

PHX vs MIL Game 2総評
・MILはDrop & Chaseの徹底でPHXのMUM戦略に対策し、PHXはSnake - Pull-upでカウンターの構え。MILの成功の秘訣は、3人目4人目のDFによるケア、Stuntingだが、そこは残念ながら徹底されていなかった印象。

・PHXはスイッチになる組み合わせ(アウトサイド同士など)でのBall ScreenでSlipを仕掛けたり、ContainかSwitchか迷う組み合わせでSlip Popを用いたりと、変化球も織り交ぜた。攻めの手札を増やしてMILをどれだけ迷わせることが出来るかに注目。

・一方のMILは、決まった形としてはAytonを引き出しながらのオフェンスリバウンド → Put Backが際立った。Lopezの1 Bigからのシュートや、GiannisのPull-upなどでAytonをContestに駆り出せたら、残りでOREBを押し込む構えを淡々と徹底したいところ。

・PHXはMILのDrop & ChaseやShow & Returnの徹底に対して苦しむ場面も少なからずあった。Drop & Chaseに対しては、AytonがGapで受ける形や、Jail Clearoutを取り入れたいし、Show & Returnでは、もっとScreen your own manを推しても良いはず。

・MILのSmall Ballに対し、明示的にAyton vs Smallerを狙ったのが1回程度だったので、どうせGiannis vs Aytonが守れるのだから、もっとAytonを使う形で展開した方が、ハンドラー陣の負担が減って良いのではなかろうか。

 

 

Game 3

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PHX vs MIL Game 3総評
・PHXのMUMが段々あやふやになってきた。どこで、誰が、誰を攻めるのか、明らかにおかしいシーンが目立ってきた。(特にD-Bookが乱している:ハンドラーのときも、オフボールのときも) これは方針を再確認するだけで改善できるはずのポイント。

・MILのSmallに対しては、Ayton vs Smallerで対処、というのは簡単にできていたが、Aytonがファウルトラブルでは使いようがないし、またMILも後半にかけてきちんとLopez or Portisを並べるようになったので、インサイドMUMはどの道厳しかっただろう。ハンドラーメインのMUMを改善したいPHX。

・PHXのSmall Zoneは、中心のCrowderが浮くのでゴール裏あたりがオープンエリアに。'short' PNRなども恐らくやられ放題になるだろう。ただ、あくまでSmall Zoneなので、Crowderがベースラインに張り付くイマドキのZoneをしたからとって効果的かはやや疑問なところはある。

・Giannisは変に中間距離でアイソするよりも、この試合のように、スクリナービッグやオフボールビッグに徹される方がPHXにとってずっと厄介。特にLow Empty PNRのスクリナーはtag不在なのでハマり役。オフボールビッグとしてDunkerに立って、合わせを見つつOREBを押し込むなどもPHXにとって厳しい。

 

 

Game 4

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PHX vs MIL Game 4 総評
・SwitchどころかLate Switchにも乗ってくれないMILに対し、思うように攻めることが出来ないCP3。その点で、素直にDropアタックをこなしてくれるD-Bookの方が良く見えるゲーム内容だった。それと関係ない場面でもCP3のパスや判断の乱れが目についた。

・PHXのセット:Elbow Thru Chicagoは、コンスタントにD-BookのPull-upを演出できていて機能していた。逆サイドでExit & ScreenをしていてStuntに寄り辛いのも強い。最後にこのセットからAytonへのアリウープがGiannisのハッスルでブロックされたのは痛かったが……。今後のゲームでの展開に期待。

・MILのディフェンスで気になるのが、Portisの判断。LopezがDropを徹底する一方で、Portisは割とスイッチで前に出て行く場面が多い。Game 4は割りかしそれでも何とか誤魔化せているシーンが多かったが、今後のGameでカモられないかは見ていて気になってしまう。

・PHXのMUM(Match Up Making)対策で何度かBlitzを試したMILだが、PHXは割と綺麗にカウンターを決めていた印象。特にSmall寄りのラインナップだと、Popからのアタック、そこからのボールムーブが円滑なので、MIL側が墓穴を掘った格好に見えてしまうことがしばしば。

 

 

Game 5

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PHX vs MIL Game 5 総評
・vs ConnaughtonのMUMは上手くいっているが、スイッチに乗らないLopezに相変わらず手を焼くPHX。Ayton vs SmallerのサイズミスマッチをポストアップやOREB面で使い分けるなどのブラッシュアップは見られる。

現代バスケットボール戦術研究(MBTR) @MBTResearch
・スイッチしてくれないLopezへのDropアタックは、どうしてもContested Shotになって不安なのがPHXにとってネック。スイッチしてくれる組み合わせを淡々と攻めるしかなさそう。特にAyton vs Smallerをオフボールで作って、他で攻めつつPut Back狙いが一番安定しそうに見えた。

・CP3がDrop Attackingで躓く中、MILがvs CP3のMUMを決めてくるようだと、CP3にどれだけプレーさせるかがどんどん難しくなる……ただ、上述したMUM戦略が徹底できれば、CP3もまだオフェンスとして機能可能と思う。

 

 

Game 6

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PHX vs MIL Game 6 総評
・vs Drop (by Lopez) でのアタッキングを漫然と続けたPHX。メインのシュートがミドルのPull-up一辺倒では期待値的に厳しいのは目に見えていたと言える。
・MILがOREB、Put Back、Transition、ドローファウルを徹底していただけにその差は際立った。

・PHX的にもSaric不在で手札不足はあったのだろうが、(しつこくて恐縮だが)Jail Clearoutなど、MILのDeep Dropに対するカウンターは一応存在した。カウンターの応酬という意味での”チェスゲーム”を見ることが出来なかったのは戦術家としては不満。

・Lopez不在の際にPortisやGiannisをスイッチで引き出してのオフェンスは上手くいっている部分もあったが、全体的にvs Bigでのアウトサイドの攻めに固執しすぎている印象で、そういうラインナップ相手にはもっとAyton vs Smallerへのフォーカスを強めても良かったのではなかろうか。

・Monty Williams的には、vs Lopez, vs Portisなどが基本線で、状況に応じてvs Connaughton, あるいはAyton vs Smallerというプライオリティだったように見えるが、皮肉にもサブオプションの方が安定択に見えた。これは戦術家としては痛恨のエラーだと思う。

 

(以上)