現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

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Clearout (Seal Screen) コンセプト 大全

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Clearout(Seal Screenとも)コンセプトは、インサイドのDFにシールすることで、ハンドラーがリムアタックできるスペースを確保し、リム付近の得点を創出するというアクションを指す。

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Clearoutについては、これまでも当ブログで幾度か扱っている。

mbtr.hatenablog.com

mbtr.hatenablog.com

 

今回は、より詳細に踏み込んで、Clearout(Seal Screen)の構造、およびそのパターンについて網羅的に論ずることとする。

 

 

 

Clearoutの基本構造分類

(基本的に以下で用いる分類呼称は独自呼称であり、類例はないことを了解されたい)

Behind Clearout

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Behind Clearout は、カバーDFないしリムプロテクターに対してBack Seal(裏側へのシール)を仕掛け、リムへのドライブコースを確保するClearoutパターンである。

Clearoutパターンとして、最も基本的なもので、イージーレイアップ創出には欠かせないオプションとなる。

参考動画

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注意点としては、カバーDF/リムプロテクターがある程度浮いた位置取りでないと仕掛け辛いこと、またシールを察知されて普通に上側を抜けられるとリムプロテクトが間に合ってしまうことなどが挙げられる。

 

 

Front Clearout

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Front Clearout は、カバーDF/リムプロテクターの正面にSealし、ハンドラーがFloaterないしRunnerをアテンプトできるだけのスペースを確保するタイプのClearout(Seal Screen)である。

Behindと違ってレイアップにはなり辛く、あくまで次善解として利用されることになる。

カバーDF/リムプロテクターがやや深めにDropしており、Behind Clearoutをセットし辛い場合などに選択するオプションとなるだろう。

参考動画

youtu.be

注意点としては、下手にレイアップに持ち込もうと深くドライブしてしまうと、結局リムプロテクターからのコンテストないしブロックを受けてしまう点である。

Front Clearoutの形になったら、大人しくブロックを受けないエリアからアテンプトするのが安定択になるだろう。

 

 

”Deep” Front Clearout

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やや発展的なパターンとして、”Deep” Front Clearoutを提示しておく。

深くDropしてきたカバーDF/リムプロテクターの正面にSealするという構造はFront Clearoutに似るが、DFが余りにも深くDropしすぎた場合は、Front Clearoutの形であっても、リムへのドライブコースを確保できる場合がある。

この場合は、ハンドラーはリム付近でレイアップ等でフィニッシュ出来ることになる。

不用意に深くドロップするリムプロテクターを相手取るときは、このオプションでレイアップを量産するのが効果的になるだろう。

参考動画

youtu.be

注意点としては、相手DFがこれに気づいて浮き気味のリムプロテクトに切り替えてきた場合に、それに応じてBehind Clearoutなどの他のパターンに的確に切り替える柔軟性が必要とされるというところが挙げられるだろうか。

 

 

閑話休題:Clearoutのよくあるミスのパターン

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Clearoutの第4のパターンに入る前に、よくあるClearoutのミスについて確認しておく。

Clearoutで失敗してしまうパターンとしては、ややフロント気味に半端にClearoutをセットしてしまい、カバーDF/リムプロテクターに抜けられてしまって、結局ショットコンテストないしブロックを喰らってしまうというパターンである。

参考動画

youtu.be

こうしたミスが起きてしまう構造としては、Clearoutスクリナーの判断の難しさがある。

つまり、安易に下側に回ると、普通に避けられてカバーが間に合ってしまうが、それを恐れて正面側を取りすぎてしまうと、今度は裏側からカバーに回られてしまう。

BehindともFrontとも選び難い、という状況で起きる問題であるが、その解決法は2つある。

一つは、BehindとFrontのいずれかを徹底し、ハンドラーにそれに合わせたフィニッシュを求めること。

もう一つは、以下に示すLateral Clearoutという両天秤をとったオプションを用いることである。

 

 

Lateral Clearout

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Lateral Clearoutは、垂直にClearout(Seal Screen)をセッティングし、前側にも裏側にも簡単に回られないよう、両天秤を取るオプションである。

カバーDF/リムプロテクターの位置取りが微妙で、BehindかFrontかを選びかねるときに用いる妥協解としての意味合いも持つ。

参考動画

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注意点:良く言えば両天秤だが、悪く言えば中途半端だ。リムプロテクターが上手く迷ってくれれば良いが、前側・裏側のいずれかを抜けられてブロックが間に合ってしまうというリスクも常にある。

基本的には、明らかにBehind Clearoutが狙える状況や、明らかにFront Clearoutが好ましい状況なら、より良い方を選択することが好ましい。

 

 

 

TransitionにおけるClearout

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Clearoutが特に活きるのはTransitionシチュエーションにおいてである。

アウトナンバーができやすいこと、第3、第4のディフェンダーの対応が間に合い辛いことなどがその要因として挙げられる。

2on1や3on2では、DF1人をClearout(Seal Screen)で無力化することのアドバンテージは極めて大きい。

また、Clearoutが失敗に終わるケースとして、第3、第4のDFからのヘルプ&コンテストが間に合うケースが挙げられるが、Transitionにおいては、万全のタイミングでそうしたヘルプを行うことは難しい。

 * ここで併せて補足的に指摘しておくと、Clearoutはそのポジショニングの関係上、オフェンスリバウンドに有利な位置を取りやすい。このため、オフェンスリバウンドの確保やそこからのプットバックを産みやすいプレーと言える。上記動画でも、Transition ClearoutからPutbackに移行するパターンをピックアップしている。

 

 

 

PNRにおけるClearout

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PNR Clearoutのパターンとしては、主に上記のようなものが挙げられる。

それぞれ以下に解説していくこととする。

 

PNR Clearout(Normal)

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シンプルなPNRにおいて、主にヘッジDFに対し、Rollしつつ裏側に回ってBack Sealを取ることで、ハンドラーのドライブコースを作り出すパターンが、最も基本的なPNR Clearoutの構造である。

参考動画

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ロールに直接パスを受けるわけではなく、また単にスクリナーDF(ヘッジDF)を惹きつけるだけでもなく、Roll & Clearoutでリムアタックをアシストするという発想である。

 

 

Jail Clearout

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Jail Clearout(”Snake Screen”という類似呼称もある)は、Put into the jail(オーバーしてきたハンドラーDFを背に背負ってアウトナンバーを作るスキル)とClearoutを組み合わせたパターンである。

スクリナーがRoll & Clearoutを遂行するための時間的猶予をPut into the Jailで確保する、というイメージで運用すると良いだろう。

参考動画

youtu.be

PNR Clearoutとその類型の一つとしてのJail Clearoutに共通する注意点は、やはり第3、第4のDFによるケア(one-pass-awayからのケアにせよ、Weaksideからのケアにせよ)を受けやすく、受けたときに本来の目的(イージーなゴール下の創出)を達成しづらくなるというところにあるだろう。

後の方に紹介するAngle Change Driveや'short' PNRは、第3のプレーヤーを関わらせることで、上記の問題をある程度抑制する構造を持っている。

 

 

vs Switch, Drive It Back

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PNR Clearoutは、スイッチDFに対しても当然機能する。

むしろ、ハンドラー側でスピード・ミスマッチが出来やすい分、そこからのリムアタックを創出するのにRoll & Clearoutの発想は欠かせない。

また、スクリナー側で見てもDFから見て厄介な構造になっている。というのは、スクリナー側はサイズ・ミスマッチが発生しやすいため、スイッチしたDFはどちらかというとディナイ or インターセプトを狙いたくなる。そうした思考の裏をかき、Back Sealを取ると、容易にBehind Clearoutの形に持ち込めることになる。(*逆に、サイズ・ミスマッチになったからといって、安易にシールで貰うことに固執してしまうと、Clearoutに持ち込めるのにそれを逃す、というようなミスに陥る危険がある)

参考動画

youtu.be

既に指摘したように、この手の2人で完結するタイプのPNR Clearoutは、第3、第4のDFのケアで他のオプションへの切り替え(キックアウトなど)を余儀無くされるという構造を持っているところが難点である。

しかも、スイッチによってミスマッチが発生すると、DF側も警戒してボールサイドへのケアを強める。

こうした状況に対しては、ごく一般的なスイッチアタックであるHitback = Boomerang コンセプト(参考リンク)の併用が有効となるかもしれない。

 

 

Angle Change Drive

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Angle Change Drive は、ベーシックなRoll & Replace アクションとClearout(Seal Screen)の組み合わせで、Replacerにパスし、そこから仕掛けるドライブにClearoutを提供するパターンである。(*Kick Outからのパターンもある)

参考動画

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Hard Showに特に有効だが、DropやSwitchに対しても効果的である。

Double Ball Screenなどから展開するパターンもある。

先ほど触れたように、第3のDFを引き出して、他DFからのケアがやりづらくなる構造になっているのが長所である。

ただし、Replacerがディナイされたときは、柔軟にハンドラーからのアタックに切り替える必要がある。ディナイされるということは、それだけオフボールDFによるケアが手薄になっているので、ハンドラーによるアタックは容易となっているだろう。

 

 

’short’ Clearout

'short' Clearoutを論じるには、まず'short' PNR アクションを理解してもらう必要がある。

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’short’ アクションは、上図および上動画のように、オフボールビッグのボールサイド・ショートコーナーへのカッティング/スペーシングから、Rollとのコンビネーションプレーや直接のスコアリングを狙う伝統的なPNRオフェンスコンセプトである。

 

この'short' コンセプトとClearout(Seal Screen)を組み合わせたのが、'short' Clearout というパターンだ。

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'short' を試みたオフボールビッグが、素直にボールサイド・ショートコーナーに入らず、オフボールでのClearoutに移行するパターンである。

オフボールビッグのDF(上図ではx4)は通常、ボールスクリナーのRollをある程度ケアしておく必要があるため、その意識の裏をかかれると、この形のClearoutをモロに喰らいやすくなる。

参考動画

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上述したように、'short' Clearoutは3人目のDFが絡むタイプのClearoutアクションなので、オフボールDFによるケアというのが比較的起こりづらい。

また、このClearoutは、応用すると、スクリナーロールへのLobをアシストする形でも使える。

 

 

 

(以上)

 

 

P.S. 

上記を一編にまとめた動画が以下となります。

Clearout = Seal Screenをパターン別に整理

 

 

 

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