オフェンスリバウンドに関する記事・動画紹介 / OREBとTransition Dの相互関係
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オフェンスリバウンド(及びOREB↔️Transition Dの相互関係)に関連する記事/動画を3本紹介していく。
以前紹介したものと被りがあるのでご了承いただきたい。
- Offensive Rebounding Concepts (by Zak Boisvert)
- Aaron Fearne Tagging Up Basketball Offensive Rebounding System
- Crash the Glass: Making a Case for Offensive Rebounding
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Offensive Rebounding Concepts (by Zak Boisvert)
ブラッド・アンダーウッド率いるステファン F. オースティン州立大学は、所属リーグで最小サイズのチーム(※スターティング・ラインナップで)であるにも関わらず、最高のOR率を度々叩きだしている。そのオフェンスリバウンドのコンセプトが二つ抽出され、紹介されているのが上記記事・動画。
OPPOSITE INSIDE
オフェンスリバウンドの際に、ボールサイドに居たインサイドに居たプレーヤーが、リムの下をくぐって逆サイド(ヘルプサイド、ウィークサイド)のインサイドへ移動してリバウンドポジションを取るコンセプトである。SFA州立大学は、自身らの外れたシュートにうち75%が逆サイドに跳ねることをデータを通じて把握し、それを生かしている。このデータ上の事実は次のコンセプトにも生かされている。
WEAKSIDE FLOOD
FLOODは「洪水、殺到」の意味。オフェンスリバウンドの際、プレーヤーのうち実に4人を逆サイド(ヘルプサイド、ウィークサイド)に送り込んでいる(逆サイドの4人のうち、2人がインサイド、残り2人がアウトサイドに立つといった配分が多い模様)。リバウンドの75%が逆サイドに落ちるという事実を鑑みれば、実に自然なシフトであると言えよう。
"Campys"/"Wedges"
ウィークサイドのベースライン沿いのビッグマンは、リム付近でマークマンの裏側に入り込んでウィークサイド側を確保することで、ウィークサイド方向のシュートミスのリバウンドを確保しやすくなる。
"Tap-Out"
よく知られている技術で、自身でのOREB確保が難しいときに、外側に弾き出してアウトサイドのオフェンスが確保するチャンスを狙うもの。以下に示すように、FTシチュエーションが特に有効。
(個人的補足:DFに確保された場合は逆速攻が早まってしまうという諸刃の剣でもある。その意味で、DFがペイント付近に偏っているFTシチュエーションで積極的に狙うのは、ローリスクハイリターンで有効性が高そう)
Free Throw X
フリースローでのオフェンスリバウンドコンセプトで、自身の近くのDFと競うのではなく、交差して逆側のDF相手にポジションを取りに行く。
DF側は近くのオフェンスをボックスアウトしようとするので、その裏をかいて良いポジションを得やすい構造。
Aaron Fearne Tagging Up Basketball Offensive Rebounding System
Aaron FearenのOREBコンセプト "Tagging Up" (Tag Up) について、Chris Oliverがまとめている動画。Chirs Oliverによる要点まとめを抜粋要約(及び補足)しておく。
・相手に対して高い位置を取っておく(tagging up over the highside)は、リバウンドを取りに行くことよりも優先される。あくまで50/50のリバウンド勝負を仕掛け、相手ボールになればそのまま即DFに切り替え。
・Tagging Upによってフルコートプレスに迅速に移行可能。ボールを即つかまえてスローダウン。
・Tag Up時はその時自分をマークしているプレーヤーを担当するので、ミスマッチが生じている可能性がある。高度なコミュニケーションが必要だが、ミスマッチが解消されるようにスイッチしながら戻る必要がある。
関連したおすすめ記事:
(Tag Upコンセプトについてより詳細に検討されている記事)
Crash the Glass: Making a Case for Offensive Rebounding
例によって抜粋要約(適宜補足)を行う。
研究背景としてのCrash the Glass, Tagging Up戦略の提唱
・OREBは全体のオフェンス効率の向上に有効で、ローテーションDF("Scrambling Defense")に対して効果的であることは知られているが、Transition Dで戻っておく頭数の確保のバランスの関係で、OREBを積極的に狙わない戦略が現在のNBAでは支配的(事実OREB%は低下の一途)。
・しかしながら近年、Ryan Pannone、 Aaron Fearne、Dave Klatskyといったコーチ達のポッドキャストでは、オフェンスリバウンドを積極的に狙う戦略("Crash the Glass")と相手のトランジションをスローダウンさせるディフェンスの両立を図る戦略が提唱されている。(="Tagging Up")
OREBと相手のトランジションに関する統計的分析
・そこで記事著者(Leicester高校のコーチ:Michael Lynch)は、自チームの試合映像を用いて、ミスショット時に①何人がOREBを狙ったか、②そもそもそのミスショットはどこで発生したか(リムでのショット、ミドル、3pt)を場合分けして分析を行った。
Table #1 補足
Crashers: OREBを狙った頭数 POSS: ポゼッション SCORE: OREBからの得点
oT-OPP: 相手によるDREB奪取からトランジションの回数
oSCORE: 相手のトランジションからの得点
oTRAN%: ミスショットから相手のトランジションになった比率
oPPP: 相手のトランジションからの得点効率(opponent point per posession)
Table #2 補足
CRASHERS: 各ミスショット別でOREBを狙った人数の平均
主なインプリケーションは
・Crashersは増やせば増やすほど、基調として、OREB%、OREB獲得からのPPPは上昇していき、一方で相手のトランジションのPPPは低下していく。
(個人的補足:4 Crashersの場合がスモールサンプル過ぎるので何とも言えない気がするが、少なくとも3 Crashersまでは概ね線型的と見なして良さそう。)
・より多くのCrashersを動員したのは3Pミスショットで、さらにOREB%が最も高く、また相手のトランジションのPPPを最も低く抑えている。
・リム付近のミスショットはOREB獲得後のPPPが最大だが、相手のトランジションのPPPも高くなってしまう。
・ミドルのミスショットはOREB%が最も低く、またOREB獲得後のPPPも最低。
(個人的補足:OREB動員数が多いほどOREB後のPPPが高いのは実感に合う。ボックスアウトした状態から迅速なカバー&ローテーションに移行するのは難しいからだ。また、OREBのやり方次第だが、OREBからトランジション・ピックアップへの切り替えをキーとするなら、OREB頭数が多いほど相手のトランジションがスローダウンするのはありそうな話である。)
(個人的補足2:3PミスショットがOREB動員数が多いのも、タイミングを合わせてOREBを狙いやすいというのがあるだろう。その場合、この関係はタフなスリーでは成り立たないかもしれない。また、ミドルショットがOREB%最低でOREB獲得出来てもPPPが最低というのは興味深く、ミドルショットへの向かい風が強くなるかもしれない。[ミドルショットに比較的タフなショットが多い=周りがOREBタイミングを合わせづらいというのもあるかもしれないが])
その他:
OREBのスキル(by Aaron Ferne)
Fighting to the “High Side” (DFの”上側”で争う)
Getting to 50/50 Position (50対50のポジション争い)
“Pinning” your opponent in the paint (DFをペイント内に「釘付け」にする)
Tipping the basketball when you can not get it with two hands (両手で奪えない場合のティッピングの活用)
Charting on Game Day ---“what we measure, gets done”
「我々が測定したものが実行される」
→ 何かをコーチングするなら、それに応じた何らかの測定が必要。
(以上)