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今回も、タイトルに沿った内容の拙togetterを紹介していく。
これはデアンドレ・ジョーダンとドワイト・パウエルという二人のプレーヤーを題材に、DFを攻略するにあたって機能しない悪いピックとは何か、逆に攻略に機能する良いピックとは何か、について考察したtogetterである。
ツイートを引用していこう。
DALから移籍したDJですが、
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
・DJのピックは微妙
・逆にパウエル(ドワイト・パウエル)のピックは上手い
という話をしたいと思います。
まずはDJの以下のシーン。
最終的にはRe-Screenでズレは作れていますが、最初のピックはダニー・グリーンに完全にファイトオーバーを許してしまっています。 pic.twitter.com/FCdcYDsgeJ
このDJのピックも、レナードにファイトオーバーを許してしまっており、スクリーンをセットする位置や角度(特に位置)に問題があると言えます。(いかにダニー・グリーンやレナードのDFが上手いとはいえ......) pic.twitter.com/u6aHBR0GGg
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
このDJのボールスクリーンもよくありません。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
『ピック&ロール…ファイトオーバーに対する”flip”(スクリーン角度変更)』 https://t.co/hbeEGwtfxF で紹介したように、この場合はハンドラーDF(レナード)のスタンス変更に合わせて迅速に"flip"すべきです。 pic.twitter.com/X2GKJIJXQ4
似たようなシーンでパウエル(ドワイト・パウエル)はどうしているかというと、https://t.co/tmiJCOotPLのように、スタンス変更に合わせた"flip"をそつなくこなしています。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
少し距離を空けてファイトオーバーさせづらくするという繊細な調整まで行っています。
DALvsSASから、DALのオフェンス。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) January 26, 2019
DALパウエルの見事なスクリーン角度変更("flip")。
やや離れた位置にポジショニングして、スクリーンに掛かりやすくしているところがGreat。
そこからのロールに対し、SASがLate Switchするか否かを迷ったところを突くパスも素晴らしい。 pic.twitter.com/7CdquGwXmg
このパウエルのピック(ボールスクリーン)も注目です。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
①適切な距離をとりつつ
②Bottom Half (DFの裏側)から
スクリーンをセットすることで、ハンドラーDFのファイトオーバーを阻止しています。 pic.twitter.com/4jEwXACwEK
このパウエルのピックも、
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 12, 2019
①適切な距離・位置
②適切な角度(Bottom Half)
が揃っており、これにより相手のDFを崩しています。
これらを総合すると、DJのスクリーンの拙さに比して、パウエルのスクリーンの上手さ(というより、そつのなさ)が目立つという印象です。 pic.twitter.com/J1fUpS7f5N
ポイントをまとめると、
・悪いピックの特徴は、「適切な距離が取れていない=密着しすぎており、ハンドラーDFに簡単にファイトオーバーを許してしまう」、「ハンドラーDFのスタンス変更に合わせたスクリーンの(迅速な)角度変更が出来ていない」。
・裏を返すと、良いピックの特徴は、「適切な距離が取れており、ハンドラーDFに安易なファイトオーバーを許さない」、「ハンドラーDFのスタンス変更に合わせた迅速な"flip"が遂行できている」。(加えて、「適切な角度=Bottom Halfにセットして、ハンドラーDFのファイトオーバーorアンダーを抑止している」ことも重要である)
2020/6/21 追記
以上をまとめた動画が以下になります。
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PNRからのロールの際に、フロントターンすべきか、リアターン(背中側へのターン)すべきかというのは以前から議論のあるところであり、それをテーマにした一連のツイートをまとめたのが上記togetterである。端的に要約しつつ、適宜ツイートを引用していこう。
まず以下の二つの記事を参照しよう。
ボールスクリーンの後はフロントターン?リアターン? | コーチMのブログ
【一般寄稿】ジョン・ストックトンとカール・マローンのピックアンドロールはもう古い! byコーチP | ゴールドスタンダード・ラボ
上記記事では、リアターン(日本ではよく見られる)よりも、フロントターンが推奨されている。その理由は以下の通り。
・フロントターンの方がスピードが出る。
・フロントターンの方がハンドラーDFとのコンタクト時にファウルをコールされにくい。(※リアターンでハンドラーDFにシールするとファウルを取られやすい)
しかし実際には、リアターンが選択される場面(選択される”べき”場面)というのも存在する。
以上を踏まえた上で、Houston Rockets Spread Pick & Roll - YouTubeを題材に、どのような場面でフロントターンが選択され、どのような場面でリアターンが選択されているのか、及びその目的について紹介した。
まずこのシーン。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) March 1, 2019
ネネイはフロントターンを選択することで、ハンドラーDFにコンタクト("Hit")して押さえ込んだまま、リム付近まで入り込んでいます。
森コーチの指摘する通り、この場合、"イリーガルスクリーン"としてではなく、単なるダイブとダイブに対するBumpと見なされがちなようです。 pic.twitter.com/8rRCWq2sSc
既に挙げたようなハンドラーDFと直接接触するような場合でなくとも、フロントターンを選択することでハンドラーDFに「きちんとオーバーしてスクリーンを回避しなければならない」と思わせることが出来ます。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) March 1, 2019
そして、きっちりとオーバーさせた時点で、ボールスクリーンの目標はほぼ達成されるのです。 pic.twitter.com/w4gpCTdxte
また、早い段階でロールする"Early Roll" (詳しくは https://t.co/CSV9Ye9JGe )の場合は、先述したような「フロントターンによるスピード面でのアドバンテージ」が重要になるので、基本的にはほとんどフロントターンが選択されているようです。 pic.twitter.com/HFsI3nkco7
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) March 1, 2019
順番が前後しますが、フロントターンを選択するパターンとして、相手がアンダーやスイッチを選択してきた場合があります。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) March 1, 2019
背後に回ってきたハンドラーDFを回避してロールする場合、物理的にフロントターンの方が回避しやすいからでしょう。(リアターンだと接触してしまうし、最悪ファウルを取られる) pic.twitter.com/8fwHSBwtJa
上記をまとめると、フロントターンを選択する場面・目的は
・ハンドラーDFにコンタクトしつつロールする際にファウルを吹かれるのを防ぎたい場合
・ハンドラーDFにきちんとオーバーでスクリーンを回避するよう強制したい場合
・Early Rollを行う場合(※よりスピードを出すため)
・アンダーやスイッチで背後に回ってきたハンドラーDFを回避しながらロールしたい場合(※リアターンだと接触してしまうし、最悪ファウルを吹かれる)
といった具合になるだろう。
次に、リアターンの場面を見ていこう。
では逆に、どのような場面でリアターンが選択されているのでしょうか?
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) March 1, 2019
分かりやすい例が以下です。
この例では、ハンドラーへのBlitz(≒トラップ)に対し、スクリナーがリアターンで即座にパスを受けてアタックしています。
リアターンは、視野の確保による迅速なパスレシーブの面で優位があると。 pic.twitter.com/K2ci7OuXC1
これはスクリナーDFによるショウDFに対し、スクリナーがリアターンして、早い段階でパスレシーブしている場面です。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) March 1, 2019
以上2例のように、DFによるBlitzやショウDFによってハンドラーにプレッシャーがかかり、スクリナーの迅速なパスレシーブが求められる場合に、リアターンが選択されがちなようです。 pic.twitter.com/NHGF3mDczy
要するに、リアターンを選択すべき場面・目的は
・Blitz(≒トラップ)やショウDFによってハンドラーにプレッシャーがかかり、スクリナーによる迅速なパスレシーブが求められる場合
に限られるということになる。
『vsBlitz、vsショウDFなど、リアターンが有効な場合もあるが、大体はフロントターンの方が好ましい』というのがおおまかなまとめになるだろう。
2020/6/21 追記
以上をまとめた動画が以下になります。
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実際の試合で、イリーガルスクリーン(特にムービングピック)か否かがどのように判断されているのか、そしてそれに合わせてどのようにピックプレーを行えばよいかについて検討したtogetterである。以下に要約していこう。
まずは以下ツイートをご覧いただきたい。
TORvsBOSから、TORのセット。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) February 28, 2019
DHOから、DHOユーザーがRipをかけに行く形のSpain PnR。(DHO Spain)
余談だが、イバカのボールスクリーンにも注目。ファウル(イリーガルスクリーン)のリスクを背負いながらも、ハンドラーDFにHitする直前までボールスクリーンの位置を調節。 pic.twitter.com/5ttKpnc3mU
このシーンにおけるイバカのピックはムービングではないか、という意見について検討した。
まず、JBA プレーコーリング・ガイドラインを見てみよう。
そこではイリーガルスクリーンについて以下のように書かれている。
(2)イリーガルスクリーン
①相手の動きにあわせて、動いてスクリーンをかける(Moving Pick)
②止まっている相手のうしろ(視野の外)でスクリーンの位置を占めスクリーンをかける
③動いている相手チームのプレーヤーの進路上に、相手が止まったり方向を変えたりして触れ合いを避けられるだけの
距離をおかずにスクリーンの位置を占めスクリーンをかける
④シリンダーを越えた手・腕・肘、そして足・お尻等、身体の一部を不当に使ってスクリーンをかける
今回考えるのは、「①相手の動きにあわせて、動いてスクリーンをかける 」の部分である。ただし、注意すべきことだが、ハンドラーDFのスタンス変更に合わせて、スクリーンをセットしなおすことそれ自体がイリーガルというわけではない。以下ツイートを見てもらえるとわかりやすいだろう。
ただ、例えば『相手の位置やスタンスに合わせて、スクリーンを調節する』という行為が禁じられているわけではない。
— 現代バスケットボール戦術研究(MBTR) (@MBTResearch) March 1, 2019
実際、以下映像のようなスクリーン角度変更("flip")にイリーガルスクリーンがコールされることはまずあり得ないと言って良いはず。 pic.twitter.com/y23rtjnsVb
『相手の位置やスタンスに応じてスクリーンを調節すること自体が禁じられているわけではない』とすると、上述のイバカのスクリーンも、「まだドライブを始めていない(ドリブルキープ中)のハンドラーに対するスクリーンの調節」と見なされれば、イリーガルスクリーンをコールされないことになる。
当然、ドライブ中のハンドラーに対してスクリーンの調節を行うと(裏を返せば、スクリーンの調節中にドライブを始めてしまうと)、その際はムービングスクリーンの規定に抵触するということになる。
問題は、「ハンドラーがまだドリブルキープ中か」or「ハンドラーがドライブをスタートしたか」が曖昧なタイミングが存在するということである。
この曖昧なタイミングのぎりぎりまでスクリーンを調節した場合(イバカのシーンはまさにこれにあたる)、審判が完全に的確な判断をするのは非常に困難になる。
現実の試合では、「ドリブルキープ」と「ドライブスタート」の間の曖昧なタイミングを狙って、スクリーンをギリギリまで調節するという手法が、あらゆるカテゴリーで採用されているというのが実態だと思われる。
後から見返せばファウルを取られかねないものもあると思うが、現状はグレーゾーンを限界まで”攻める”方が有利になっている。
(以上)
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