現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

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基本ムーブメント、セットオフェンス、DFシステム、ゾーンアタックなどを日々研究・解説しています。

スパーズのP&Rディフェンス(Drop, Late Switch, etc) / Chop cutについて

今回は、お馴染みCoach Danielチャンネルから、スパーズのP&Rディフェンス解説動画(2個)の紹介と、Chop cutの紹介を行いたい。

 

①スパーズのP&Rディフェンス

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スパーズのP&Rディフェンス紹介動画の最初は、"Drop"の紹介から始まっている。

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Drop上記の通り(そして文字通り)、スクリナーDFがリム方向へ”Drop”して守るDFであり、いわゆるソフトヘッジとほとんど同じものだ。

このDFは、ボールマンのペネトレイトとスクリナーのロールインを双方守りたい場合に有効になってくる。

注意すべきなのはボールマンDFで、簡単なプルアップジャンパーを打たれないようにきちんとOverで追い掛け、プルアップに対してContestしなければならない。

以下に示すようなバリエーションがある。

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最初のForce Directionは、ボールマンDFが方向づけをすることで、ボールマンのドライブ方向を誘導するコンセプトである。ドライブ方向を絞ることが出来れば、カバーDFの混乱が起きなくなる。

二番目のContest vs Snakeは、スネークドリブルに対し、ボールマンはOverによる遅れを可能な限り埋めつつContestしなくてはならない、というコンセプト。ここからイージーなジャンパーを打たれてしまうと、Dropを続けるのが厳しくなる。

三番目のDropping backは、DropしているスクリナーDFが、ボールマンDFのジャンパーへのチェックを行わず、むしろロールインするプレーヤーへのパスをケア&ボックスアウトを行うことに集中するというコンセプト。Dropの弱点は、やはりロールインするプレーヤーへのパスが通りやすいことだし、カバーDF全般の弱点として、ビッグマンへのボックスアウトが疎かになるというところがあるので、この二点には十分注意しなくてはいけない。

 

次に、Dropコンセプトが”捨てる”シュートについて。

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プルアップはマークマンがチェックするとしても、やはりフローターまではケアし切れない。また、ロールインするプレーヤーが、フリースローライン当たりで止まってジャンパーを狙う場合もケアが難しい。相手のプレイスタイル次第では、あまり機能しないDFであることには注意したい。(尤も、それはどのDFにおいても言えることだが)

また、動画冒頭でも強調されているとおり、Dropコンセプトは、スクリナーのポップに滅法弱い。スクリナーがポップからの3Pなどを得意とする場合は、あまり効果的でないDFであることには注意しておきたい。(少なくとも、何の改変も加えずにそのまま用いることは出来ないだろう)

 

次に紹介されているのが”Late Switch (Veer)”だ。

 

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以前にスティーブンス、メッシーナのボールスクリーンDFコンセプト +α(Veer-Back)の方でVeer-Backとして紹介したのと同じコンセプトで、Dropから一拍置いてスイッチに移行するDFコンセプトである。

図の通り、ハンドラーがリムにアタックしたのに合わせて、ロールインするプレーヤーへのパスをケアし、なおかつスクリーンアウトを行うというのが目的になる。

 

ただしこの場合、ガードDFがビッグマンをスクリーンアウトすることになるので、サイズのミスマッチが生じる。このミスマッチに対しては、以下のように、周りのDFがディフェンスリバウンドの補助を行うことで対策しなくてはならない。

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また、ハンドラーがシュートを選択することが予想できた場合は、ハンドラーDFはスイッチするのではなく、以下のようにカバーDFと協力してシュートのContestを行うという判断も十分にあり得る。

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Late Switchの弱点についてもきちんと知っておこう。Late Switchに対して、ハンドラーがそれを察知してリトリートドリブルを行った場合は、ミスマッチが発生してしまい、Hitbackなどでそのミスマッチを攻撃されることになってしまう。

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次に、スパーズのP&RディフェンスにおけるオフボールDFの動きについての解説に移ろう。

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オフボールDFは、ロールインに即座にBumpできるよう、ペイントエリアに片足を入れた位置を取る。それでいて、キックアウトに対しては即座にクローズアウトできなくてはいけない。(※マークマンがシュートを不得手としている場合は、敢えてそのプレーヤーを捨ててBumpに集中しても良い)

この場合、逆にオフボールDFがマークマンに近づきすぎていると、却ってBumpとクローズアウトを両立させ辛い。Bumpを狙いに行った瞬間にキックアウトされたら、そのシュートをケアするのは困難になってしまうからだ。

 

最後に、サイドからのDHO及びP&Rに対するDFについてである。

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スパーズでは、DHOに対してユーザーDFへの激しいディナイ(あるいはチップ)を狙う様にしている。これによってターンオーバーを誘発したり、DHOからのイージーなプレーを防ぐことが期待できる。

ただ、こうしたハードなDFは、バックドアを狙われやすい。上図でも示しているとおり、バックドアに対する強いケアを行うことが重要だ。

 

以下はサイドP&Rに対するLate Switchを示す。

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上記のような図解・解説を頭に入れて今一度Coach Danielの動画を見れば、よりいっそうDrop系ディフェンスへの理解が深まるはずである。

繰り返しになるが、このDrop系のディフェンスはPick & Popにはあまり有効ではない。実際スパーズは、Deffeinsive Rateはかなり良い方だが、3Pを結構打たれてしまっているそうだ。その理由はP&Pへの弱さもあるのではないだろうか。

P&Pに対するローテーションについては、先ほども挙げたスティーブンス、メッシーナのボールスクリーンDFコンセプト +α(Veer-Back)のスティーブンスの項を見ると良いと思う。

 

 

②Chop cutについて

 

Chop cutは、以下の動画で紹介されたカッティングプレーである。

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簡単に言えば、P&Rに合わせて、三人目のプレーヤーがダイブするプレーになる。

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オフボールDFは、ロールマンをケアしつつ(Bumpを狙いつつ)、キックアウトされたらクローズアウトしてシュートにContestするというのが定石だ。

Chop cutはこれの逆を突き、ロールインしたプレーヤーの後を追うようにしてボールサイドカットすることで、イージーショットを狙うのである。

もしこのChop cutをケアしようとすると、上(右側)でも示したように、ロールインに対するBumpが疎かになるので、簡単にロブパスが通ってしまう。

このように、Chop cutは非常にDFの難しいコンセプトなのである。

ダラス・マーベリックスには、Chop cutに移行する2つのセットがあると紹介されている。

 

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一旦Cutterにボールを預け、そこからの展開と同時のP&Rを仕掛け、Chop cutに移行する。当然、それをケアして2のマークマンがBumpを怠れば、必ずロールマンへのLobを狙う。

 

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AI(アイバーソンカット)&アンダースイング(≡OverUnder)から、P&RおよびChop cutに移行するセット。最終形はSet 1と同じになる。

 

※この動画の後半のBonus Trackとして、Changing side in transitionというコンセプトが紹介されている。その名の通り、速攻~アーリーにおけるサイドチェンジのことで、そうすることで相手のピックアップを混乱させ、オープンショットを作りやすくするというコンセプトである。(これを防ぐには、DF側の良いコミュニケーションが求められる) どんな運用がされているかは、実際に動画を見てみると良い。