現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

基本ムーブメント、セットオフェンス、DFシステム、ゾーンアタックなどを日々研究・解説しています。

対エースDFシフト byマイク・ロンガバーディ(Cleveland Cavaliers assistant)

クリーブランド・キャバリアーズでアシスタントコーチを務める(※執筆時点)Mike Longabardiのclinic noteである”Defending the Great Player"を紹介(適宜翻訳)したいと思う。

これは抑えたい相手のプレーヤー(エース)に対し、そのエースのポジションやエリア別の対策DFシフトを紹介・解説したもので、そのまま利用するのはもちろんのこと、こうしたシフトに対してのカウンター戦術を組み立てる上でも極めて重要なノートであると思われる。

 

vs ポイントガード

①Load to the Ball

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x5(5のDF)が大げさなヘルプDFシフトを取ることで、1(エース)からのパスを誘う戦術である。

目論見通り5へとパスされれば、1に対してディナイを行う。

 

②Load to the Touch

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①よりさらに露骨で、1に対するダブルチームを"演出"する。

目論見通り5へパスされたとき、慌てて5へとクローズアウトするのではなく、1へのパス返還をケアしながら近づき、1の絡まないプレーへと誘導する。

 

③Face to Face

こちらのフリースローの際、相手の1にボールが渡ってプレーがスタートするのを避けたい。そのために、1のマークマンはフリースローの終了時、1をフェイスガードして、(理想的なケースでは)1以外のプレーヤーにボールプッシュさせ、そのまま1へのフェイスガードを続行する。

 

④Hit

フリースロー後、1(エースPG)にボールが渡った場合、リバウンダー(基本的にインサイドであろう)のうちの一人が"ソフトトラップ"を仕掛ける。この場合、マークマンがフロントへとエントリーしたら、トラップに固執せずにバックする。1に躊躇いを生じさせ、オフェンスリズムを狂わせるのが目的。

 

 

vsウィング・アイソレーション

①Big Above

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相手のビッグマン(ここでは4/5)がトップでボールを持ち、エースプレーヤー(ここでは3)がウィングに居る時、x3は「コンタクトディナイ」を仕掛ける。コンタクトディナイは、文字通り相手にコンタクトして、リムへのランニングコースに体を入れたままディナイをするプレー。3が(カッティングなどで)ボールを受ける場合も、3が可能な限りリムから遠ざかるように位置を取る。

 

②Fist Up

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ビッグマンDF(x5)がボールサイドのローポストにあらかじめ位置取り、ヘルプサイドコーナーDF(x2)が5をケアする。ボールマンDF(x3)はベース方向へ誘導する。

もしヘルプサイドへボールが飛んだ場合、x4がまずクローズアウトし、もう一人にx2がクローズアウトして(X-out rotation)、x5が5に戻る。

 

③Fire

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ショットクロックが残り少ない時に有用。

ボールマン(エース)をミドル方向に誘導し、トップDFがヘルプすることでトップへとパスさせて、図のようなローテーションを行う。2にボールが渡る場合、x5が2へとローテーションし、5のボックスアウトはx1が行う。

 

vsエルボー・アイソレーション

①Fist Up

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形はほとんどvsウィング・アイソレーションのFist Upと同じで、x5がヘルプポジションを取り、x3がベース方向へ誘導、x1がビッグマンをケア、スキップパスに対してはx4とx1がX-out rotationを行う。

 

②Fire

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これもvsウィング・アイソレーションのFireとほぼ同じ。

x3がミドル方向へ誘導し、x4がヘルプ、パスに対してx1→4、x5→1、x4→5のローテーションが生じる。

 

vsトップ・アイソレーション

Hit

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(x2がエースの2の利き手側に位置取った上で)x5が利き手の逆側へアプローチ、x4がヘルプポジションを取って、x3が4をケア。2にコーナーへの苦しいスキップパスを出させるのが目的。

 

vsキャッチ&シュート

①Top Lock

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Awayスクリーンに対し、マークマンがスクリーン方向にコンタクトして、スクリーンを徹底して使わせないというDFシフト。バックドアに対しては、スクリナーDFがケアする。

仮にスクリナーのシュート力が高い場合は、スクリナーDFはある程度スクリナーに近い位置にポジショニングする必要があるが、スクリナーのシュート力が低い場合は、思い切りスクリナーを離してバックドアのケアに集中して良い。

 

②Blitz

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スクリーンを伴うカットアウトに対し、スクリナーDFもクローズアウトしてギャップを潰し、ダブルチームに近いシフトを作る。この際、ヘルプサイドからの(図のような)ローテーションを素早く行うことが重要で、これがないと4などにイージーショットさせてしまう。

 

Top Lockでバックドアを誘い、バックドアからのカットアウトに対してBlitzを仕掛けるというのがお決まりのパターンになる。

 

vsポストアップ(ウィングプレーヤー)

Red

ポストアップしたエース(フォワード)に対してフルフロントを取り、ウィングのボールマンには強いプレッシャーをかける。ポストへパスが出たら、ポストのDFはジャンプしてスティールを狙う。(仮にスティールできる可能性に乏しくても…)

もしポストへパスが通れば、ヘルプサイドからDFがヘルプに向かい、ポストマンにダブルチームを組む。

 

GLAY

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ポストマンのドリブルに合わせて、ヘルプサイドDF(基本的にはインサイド)がベースライン方向からダブルチームに向かう。ポストマンには決してミドル方向へ行かせない。

ポストDFはミドル側の手でボールを狙い、ベース側の腕で相手の体を触ることでポストマンがベース方向へスピンするように誘導する。

 

vsポストアップ(ポストプレーヤー

GOLD

ポストDFがポストマンに対してリムへのコースを体で塞ぎつつ、ボディコンタクトした状態からDFをスタートする。

GLAYと同様、相手のベースライン・スピンを誘いつつ、ベースラインからのダブルチームを狙う。この際、ダブルチームに向かうのはヘルプサイドのDFのうち最も低い位置にいるプレーヤー(ポジションは問わない)。

ポストDFとヘルプDFは、T字を作るように密着したダブルチームを行い、決してスプリットを許してはならない。

 

※(当たり前のことだが)上述の各種シフトの中でダブルチームを組んだ際、パスが展開された後のセカンドショットをきちんとケアできなければならない。(そこでオープンショットを作られてしまうのは良くない)そのためには、ダブルチームを行っていたプレーヤーの迅速な反応・判断が重要になる。

 

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