現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

基本ムーブメント、セットオフェンス、DFシステム、ゾーンアタックなどを日々研究・解説しています。

スイッチDFの攻略法 / "P&RからPickを取り去る"という革命

今回は、PICKANDPOP.NET | powered by Zak Boisvertから、二つの記事(&動画)を紹介する。

 

スイッチDFの攻略法

pickandpop.net

www.youtube.com

 

この記事(&動画)では、スイッチDFの攻略法を種類別に細かく紹介してくれている。

一つ一つ図解付きで解説していこう。

 

HITBACK

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5→1 PNRでスイッチさせた後、他のプレーヤーとパス交換してアウトサイド・ミスマッチを攻撃するコンセプト。

1-5の平面のミスマッチを攻めるにあたって、5DFにヘルプDF↔ボールマンDFを行き来させることで、平面のギャップを作りやすくしている。

また、パス相手(この場合は2)のマークマンDFを一時的に外へ引き出すことで、中のスペースを広げることも出来る。

 

 

EVERTHING COMES OUT IN THE WASH

come out in the washは「最終的にはうまくいく」という意味で、5→1 PNRでアウトサイド・ミスマッチを作った後、ボールムーブやドライブ&キックアウトを繰り返して、スコアを狙うというコンセプト全般を指す。先に紹介したHITBACKも、この方針のうちの一部ということになる。

 

 

SCREEN YOUR OWN MAN

スイッチDFでは、シューターのカットアウトにスクリーンがセットされた場合、スクリナーDFがSWITCH OUTを行ってケアするのが普通である。

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これに対し、スクリナーが、2DFではなく、自分のマークマンである5DFにスクリーンする(SCREEN YOUR OWN MAN)ことで、DFを混乱させ、オープンショットを作ることが出来る。

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"154" ACTION

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4→1 PNRから、5→1 PNRに繋げるコンセプト。

図のように、二回目のPNRを比較的鈍重な4DFと5DFが守らなくてはならないというシフトになっており、平面のギャップを作りやすい構造になっている。

 

 

SCREEN WITH WEAKEST DEFENDER'S MAN

一番ディフェンス力の弱い(特に、サイズが小さい)DFにマークされているプレイヤーがボールスクリーンを行い、わざと(スコア能力の高い)ボールマンへスイッチさせて、そのミスマッチを攻めさせるというコンセプト。

GSWvsCLEでは、このコンセプトによってレブロンvsカリーが作られ、レブロンが簡単に得点するという場面が散見される。

 

 

BUNCH FORMATION

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現代バスケットボールの基本的な動きで紹介した”Double Stagger”を用いるコンセプトである。

図のように、二枚のスクリーンをセットした複雑なカッティングは、スイッチDFをしばしば混乱させる。特に5によるScreen your own manを組み合わせると、アウトサイドにギャップを生みやすくなる。

 

 

BIGS PUNISH SMALLS ON OFFENSIVE GLASS

スクリーン等によってビッグマンとガードのミスマッチが生じた際、ビッグマンがサイズ差を利用してオフェンスリバウンド→プットバックを試みるコンセプト。

 

 

余談

紹介記事以外の代表的なスイッチDFアタックとしては、Slipムーブがある。

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他にも、Backdoor(Reject)ムーブも有効になる場合がある。 

 

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"P&RからPickを取り去る"という革命

pickandpop.net

 

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シンプルに、マイク・ダントーニの言葉を引用してこの記事を終わりにしたいと思う。

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"君がピックをする理由は、PGかボールハンドラーにアドバンテージをもたらすことだろう"とダントーニは言った。"君がピックを狙い、それが(マークマンの)声で伝わってディフェンスにばれたら、そのとき君は(飛び込むべき)ポジションへと飛び込めばいい。そうしたらオフェンスにアドバンテージが生まれる。その動きは大いに役立つ。行きなさい。君は圧倒的優位に立てる。きちんとスクリーンをかけたりしなくていい。君はただ(飛び込むべきポジションへ)行けば良いのだ。"

 

 

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スイッチDFの3つのメリット

 今回は、高坂晴耶(ミネソタ) (@Minstku) さんのツイートを参考に、スイッチDFの主なメリット3つを解説していく。

 

①アウトナンバーにならない

②時間的優位

③逆ミスマッチ

 

 

 

①アウトナンバーにならない

 このうち、「高さのミスマッチはローテーションで無くすことができる」というのは、Golden State WarriorsのスイッチDFコンセプトで紹介したEmergency Post Switch "Scram"のように、ポストでのミスマッチをオフボール・スイッチで解消する動きのことを指していると思われる。

 

アウトナンバーからイージー・バスケットをされるのが最も避けたい事態である場合は、(スピード差がありすぎて平面だと一瞬で抜かれてしまう、というわけでもない限りは)ミスマッチを許容してスイッチする方が望ましいといえる。

 

 

 

②時間的優位

 

 

アウトナンバーやギャップからシュートを打つのは極めて短時間で可能な一方で、ミスマッチを攻める場合は、上述の通りオフェンスに長い時間が必要である。

オフェンスの時間制限が存在するため、スイッチDFを使ってオフェンスに長い時間をかけさせることは、結果的に相手のシュートクリエイトを難化させる。また、得点のテンポ自体も抑えられる。

 

 

 

③逆ミスマッチ

 

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仮にミスマッチを攻められたとしても、トランジションになれば逆にそのミスマッチを利用できるというメリットである。

同じミスマッチであっても、ハーフオフェンスのミスマッチと、トランジション~アーリーのミスマッチでは、後者の方が得点可能性が高いという非対称性があるため、ハーフをスイッチできっちり守った後にトランジション~アーリーを攻めることが出来るなら、"後攻"側が有利になるという側面もある。

 

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最新NBA戦術紹介番外編"4 NBA Concepts"

Coach Danielチャンネルから、再びNBA Conceptを紹介する。

これまでの紹介記事はこちら↓↓

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今回紹介する動画では、以下の四つのコンセプトを提示している。

①Big man screening the X-Out rotation

②Duck in immediately after a switch

③P&R where the offensive big man rolls 'under' the defensive big

④Back screen in semi-transition/early offense

 

www.youtube.com

 

①Big man screening the X-Out rotation

このコンセプトを理解するには、まずX-Out rotationを理解する必要がある。

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X-Out rotationとは、図の通り、ペネトレイトに対するカバー&ローテーションの後、ヘルプサイドにキックアウトされた場合のクローズアウト・パターンのことである。

DF2は、いったん5をケアした後、キックアウトに反応してヘルプサイドのフリーなオフェンスへとクローズアウトする。この際、DF2とDF4が"X"の軌道を描いてクローズアウトするため、X-Outと呼ばれているのである。

ここで、クローズアウトするDF2にスクリーンをかけることが出来れば、図の4がワイドオープンになる。これがBig man screening the X-Out rotationである。

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X-Out rotationというディフェンスフォーメーションと、それに対するScreeningというカウンター(メタ戦術)は、セットで押さえておきたい項目である。

 

 

②Duck in immediately after a switch

 

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これは極めてシンプルなコンセプトで、スクリーンに対するスイッチでミスマッチが起きたとき、迅速にDuck inを行ってリムにアタックするという戦術である。

わざわざ”迅速”(immediately)とつくのは、ポストに対するオフボールスイッチ(Scram)などでミスマッチを解消する戦術が存在するため、解消される前に攻める必要があるからである。

 

 

③P&R where the offensive big man rolls 'under' the defensive big

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図の通り、ロールインするスクリナー(5)が、スクリナーDF(DF5)の背後にまで入るプレーである。

ボールハンドラーがマークマンを抜き、スクリナーDFがカバーに出た状態のときに有効な動きになる。

この際、4は図のようなスペーシングを行い、スクリナーを守りづらくさせるのが重要である。

 

 

④Back screen in semi-transition/early offense

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トランジションでRipをセットするシンプルなプレー。

トランジションにおけるピックアップにおいて、Ripをきちんとケアするのは困難であるため、極めて単純であるにも関わらず守りづらいムーブメントになる。

 

 

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Early Offenseについて

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Early Offense(いわゆる『アーリー』)は、速攻(ファーストブレイクないしセカンダリーブレイク)とハーフオフェンス(Motionなど)の中間的なオフェンスである。

 

あくまで5on5の状況を想定しながらも、速いテンポ、ないし早いタイミングでのスコアリングを志向する場合に用いられる攻撃様式である。

 

今回は特にGolden State Warriors Playbook: Early Offense - YouTubeを例示し、それを通じてEarly Offenseの基本コンセプトを確認する。

(その他参考リンク:Mike Malone Sacramento Kings Early Offense - YouTube

 

www.youtube.com

①21 (0:00)

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現代バスケットボールの基本的な動きにて"Pistol Action (21 Series)"として紹介したムーブメントである。

1→2 Flip、1→2 DHO、2→1 PNR、1→2 DHO&5→2 PNRという風に、1と2のツーメンプレーに5のPNRを組み合わせた多彩なムーブメントの総称である。

1と2、双方の得点力が高い時に特に有効になる。

(このPistol Actionについては、別の記事Pistol Actionまとめの方が網羅的にまとまっているのでそちらの閲覧を薦める)

 

 

Phoenix(Drag), Phoenix(Drag) Double (0:50)

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現代バスケットボールの基本的な動きにてDrag, Double Dragとして紹介したムーブメント。

後ろから走りこむリバウンダー(基本的にインサイド)が最初にPNRを行うという、シンプルかつ有効なもの。

一枚目をシューターにして、シューターへのパスを狙うPhoenix(Drag) Wildcatといったパターンもある。

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③Early Away, Early Away Slip (3:10)

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現代バスケットボールの基本的な動きで解説したAway(Pindown)ムーブをEalryに取り入れたもの。

スクリナーがSlip inするAway Slipもある。

 

 

概観すると、Ealry Offenseは早い段階で21やDragといったシンプルなムーブメントを行い、得点を狙うシステムである。

こうしたEarly Offenseは、効果的に得点ペースを上げることが出来る反面、攻撃が淡泊になりがちでもある。これをコントロールするため、Motion OffenseシステムやHalf Setを併用するというのが常道になるだろう。

(余談だが、SpursはMotionの中にEarlyの要素を組み込むというシステムを持っており、とても参考になる。→San Antonio Spurs Early Offense Action - YouTube

 

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おすすめEnd of Game Set(EOG)

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今回は、Half/Horns/ATOBLOBSLOBに続いて、End of Game Set(EOG)を紹介していく。

EOGはその言葉通り、試合終盤のスコアリングを目的としたセットプレーで、Need a ScoreとNeed a Threeに大別される。

「2点を狙うか3点を狙うか」「何秒以内にスコアリングするか」「誰を使ってスコアリングするか」といった判断基準に則して、セットを選択していくのが望ましいだろう。

 

 

www.youtube.com

Winner (Need a Three) (0:16)

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Zipper Cutを囮にし、ZipperスクリナーにFlare Screenをセットしてロブパスを通した後、Zipperユーザーにスクリーンをセットするプレー。

相手のディナイが激しいほど有効になる。

 

 

Punch Rip Turn (Need a Score) (0:50)

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4→5クロススクリーンによる5 post upにボールを入れた後、4→3 Ripと4→2 Downに移行するプレー。

クロススクリーンとRipによってベースライン側にDFを収縮させることで、2のペリメータージャンパーをオープンにすることが出来る。

 

X high Series (Need a Score  or Three) (1:50)

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3と5のX Cutの後、4→2 Ripをセット。そのまま2に入れてスコアリングを狙うのが基本形になる。

ここからX high Slip、X high Fadeといった様々な発展形があり、形に応じてScoreかThreeかを選択できる。

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Zipper Go Series(Need a Score) (3:10)

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4&5→3のZipper Cutから、3のペネトレイトを狙うのが基本形。

5→4 DownによるThrowbackを組み合わせたZipper Go Backといった発展形を有する。

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Wiper (Need a Three) (3:57)

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1のドリブルダウンと4→2 Wiperを組み合わせたシンプルなセット。

4のSlip Outも考慮する。

 

 

Stagger Series (Need a Score) (4:27)

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Away Screenでエントリーした後、ヘルプサイドにStaggerをセットするシンプルなプレー。

Staggerを囮に3がそのまま一人で攻めるStagger ISOの他、Stagger Twirl、Stagger Fan、Stagger Slipといった様々な発展形がある。

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Flip Flare (Need a Three) (8:14)

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1→2 Flipから4→2 Flareに移行するムーブ。

FlareスクリナーのSlip inも考慮する。

 

 

Give Back Series (Need a Three) (8:44)

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4 Top(ないし5 Top)エントリーからハンズオフに移行し、3Pを狙うプレーが基本線。

おすすめSLOB(サイドセット)紹介で引用したSPECIAL Seriesとほぼ同じ形。)

5→4 FlareをセットするGive Back Flareや、ボールスクリーンプレに移行するGive Back PNRといった発展形がある。

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Push Baseline Exit (Need a Three) (11:40)

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バックコートからエントリーし、5→1のボールスクリーンと3→4 スクリーンを組み合わせるプレー。

5→1 PNR Slipから5→2 Pindown(いわゆるVeer)も組み合わせられる。

 

 

Rice Wildcat (Need a Three) (12:00)

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1→2 Ripから5→1 STSを経て、5→2 Pindownに移行するムーブ。(スクリーンユーザーが逆方向へ再びスクリーンを利用する動き全般をWildcatと呼ぶ)

おすすめSLOB(サイドセット)紹介で引用したLEAK Seriesとほぼ同じ形。) 

 

Seal (Need a Score) (12:26)

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上図はあくまで一例だが、カットアウトやスクリーンプレーで逆サイドのベースライン側をクリアにし、5がSealしてロブパスを通してポストプレーを行うコンセプトのプレー。

 

 

www.youtube.com

Hammer (0:00)

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文字通りHammerプレーを主軸にしたEOG。

前者では、5Topエントリーから、5のドライブから、ヘルプサイドでのHammerへとパスを出す。

後者では、1のIverson Cut (AI) からのドライブに、逆側でのHammerを組み合わせている。

 

 

Post Flare (1:11)

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5→3 クロススクリーン + 2→4 Ripから、5 Post upにパスを入れ、2→1 Flareへと移行する。

 

 

その他参考推奨動画

2014-15 NBA End of Game Playbook - YouTube

おすすめSLOB(サイドセット)紹介

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これまで

おすすめHalf Court Set / Horns Set (Elbow Series) / ATO Set 紹介

及び

おすすめBLOB(エンドセット)紹介

で、Half SetやBLOBを紹介してきた。

今回は実在のSLOB(いわゆるサイドセット)を紹介していく。

ここでも現代バスケットボールの基本的な動きに準拠して記述していく。

 

 

www.youtube.com

Quick Pitch Get (0:00)

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2のZipper Cut ⇒ 1→2 Flip ⇒ 5→1 PNRという展開のフォーメーション。

これに限らず、多くのSLOBはZipper Cutでエントリーする。かなりオーソドックスなセットになる。(全く同じ形のものとしては、Los Angeles Clippers SLOB DHO PNR)

似た形として、Zipper Cutした2にそのまま5がボールスクリーンをセットするものがあり(Los Angeles Clippers SLOB Zipper PNR)、これも極めてオーソドックスなSLOBになる。

 

Loop (& Loop Backdoor) (0:50)

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Zipper Cut → Floppyという形で行われるお馴染みのLoopオフェンスは、当然SLOBのZipperエントリーでも用いられる。

最後のFlare ScreenをTop-LockやSwitchでケアされた場合のための、Elbow Flash Backdoorのパターン "Loop Backdoor" もある。↓↓

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STS (2:19)

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Zipper Cutのフェイクから4がWingにSpot upし、5への展開を経由する。

その後、2→1 Ripと4→2 STSに移行する。

4のAway Slipや、4→2 STS後の5→2 PNRなどがバリエーションとして考えられる。

 

Away (3:00)

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Zipper Cutしたガードにボールを入れ、ヘルプサイドでAway(Pindown)を行うフォーメーション。極めて基礎的なパターン。

 

SLOB Backscreen DHO (1:50:04)

www.youtube.com

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Zipper CutのフェイクからWingにSpot upした5にボールを入れ、2→1 Ripの後、5→2DHOからの4→2 PNRに移行するフォーメーション。

先ほど挙げたGSWのSLOB STSとかなりコンセプトは近い。STSを行うか、DHOやPNRを絡めるかの違いだけである。

 

 

 

Houston Rockets "Chicago"

www.youtube.com

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UCLA Cut ⇒ Chicago (Away+DHO)

UCLAを起点にした極めてシンプルなオフェンスビルド。

 

 

www.youtube.com

SLICE (0:00)

f:id:ocum2013-041:20181026124426p:plain

インサイド(4)を介してサイドチェンジし、5→1 Ripと4→3 Awayを組み合わせて攻めるフォーメーション。

ダイブした1に出してから4→2 Flareをセットするパターン(SLICE DUMMY)や、1→5 Rip + 4→1 STSに移行するパターン(SLICE IOWA)がある。

 

 

"SPECIAL" Series (1:39)

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2→4アウェイによる4 Topエントリーから、4→1 DHOに移るフォーメーション。以下に挙げる多彩なパターンがある。

 

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4→1 DHOをキャンセルし、4がドライブインを試みるパターン。(KEEP)

及び、4→1 DHOの後に5→4 Flareに移行するパターン。(FLARE)

 

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4→1 DHOから1→2 DHOに移行し、4→2 PNRをセットするパターン。(PITCH)

 

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1がヘルプサイドへカットアウトし、4のアイソレーションを狙うパターン。(ISO)

 

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2がトップにエントリーし、2→1 DHOと4→1 PNRを組み合わせるパターン。(ORLANDO)

(DHO PNRや、Quick Pitch Getとほぼ同じ最終形になる)

 

 

DOUBLE (3:50)

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5 Topエントリーから、ヘルプサイドの1に展開し、3&5→1 のDoule PNR (Double Drag) を狙うフォーメーション。

5はRoll in、3はPop outを狙う。

 

RIP (4:11)

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5 Topエントリー→1へのサイドチェンジから、2→4 Ripと5→2 STSを狙うフォーメーション。先に挙げたGSWのSTSとコンセプトはほぼ同じ。

 

 

LEAK (5:18)

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2→4 Awayに5→2 STSを組み合わせ、2の3Pと5のSlipを狙うフォーメーション。

4(or5) Topにボールが入らない場合のオルタナティブ・プランの一つになるだろう。

 

 

DEEP (5:38)

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2→4 Awayを試みつつ、5→3スクリーンで3のボールサイド・コーナーエントリーを行う。

その後、5→1 Ripで1はカットアウトし、5→3 PNRに移行する。

これも、4(or5) Topエントリーが出来ない場合のオルタナティブ・プランの一つである。

 

LEAK Series

www.youtube.com

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1→2 Rip&5→1 STS(LEAK)を基本線とする。(Celticsの5 Top LEAKとの混同注意)

その後、5→2 Down(Wildcat)とそのSlipを狙う。この基本形から以下の様々な形に派生する。

f:id:ocum2013-041:20181026223618p:plain

2→5 Rip Slipに4→2 スクリーンを組み合わせるパターン。

 

f:id:ocum2013-041:20181026223920p:plain

5→2 STSから5がポップアウトし、2→1 Ripから5→2 DHOに移行するパターン。

 

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5→3 Flare、2→4 Ripから5→2 STSに向かうパターン。

 

 

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こうして概観すると、SLOBのエントリーは

Zipperエントリー(ユーザーorスクリナー)

UCLAエントリー

5(or4) Topエントリー

LEAKエントリー

などに大別でき、相手のDFの対応やオフェンスしたいポイントに応じて、エントリーとその後の展開を使い分けているという印象である。

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【追記:2018/10/26】

Spurs "Hand Off - Options"

www.youtube.com

真新しいSLOBビルドとして、STS(Cross Screen -Down Screen)型のセットアップがあったので紹介。

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5→2 Cross Screen + 4→5 Down Screen (STSアクション) から、5→1 DHOへと移るのが基本線のSLOBセット。 以下の派生パターンがある。

 

f:id:ocum2013-041:20181026225555p:plain

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おすすめBLOB(エンドセット)紹介

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前回のおすすめHalf Court Set / Horns Set (Elbow Series) /ATO Set 紹介に引き続き、BLOBセット(いわゆるエンドセット)を紹介していく。

 

前記事に引き続き繰り返しになるが、ムーブメントの用語は、現代バスケットボールの基本的な動きに準拠しているため、併読することをおすすめする。

 

BLOB

www.youtube.com

"LA" (0:00)

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逆サイドウィング(2)に水平なStaggerFlat Double)をセット。(この形は各チームのBLOBで超頻出)

2のバックドア・オプション(4と5の間をスプリットするパターンもある)を常に狙いつつ、基本線では1→2→4パスからの2→1ダウンスクリーン ⇒ 4→1ハンズオフという展開を狙う。

1→4パスから直接4の3Pを狙うパターンもある他、3のマークマンが中に寄りすぎていたら即座に3に出して3Pを撃つ(あるいは3&5でオフェンスする)というオプション("Dummy")も意識しておかなくてはならない。

他の形としては、4→1ハンズオフの後、4が2へダウンスクリーンを掛けるという形がある。(Los Angels Clippers "52 Base")

また、最初の1→2のパスアウトの後に4→2Fist、あるいは4→5スクリーンからの5→2Fistといった形もある。(Utah Jazz"Double into PNR") (Denvar Nuggets "Flat Double")

 

 

"Rip" (1:44)

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2→3のRip、4→2のSTSを起点とし、5→1のPindownで終わるBLOB。

「最初に5がウィングにSpot upしてペイントエリアのスペースを広げる」

「4がいつでもダイブできる態勢を取る」

「3は最初は水平にカッティングするフェイントを入れる」

といった様々な工夫がある。

 2→3のRipから、4&5→2のSTS&Double Screenという形もありえる。(Houston Rockets "Backscreen Double")

 

"Elevator" (2:38)

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1-2-4-5のラインから、1と2の(4&5ダブルスクリーンを使った)ボールサイドカット("Stack Double")を起点に4&5→1のElevator doorをセットする形のBLOB。

最初の二つのボールサイドカットを相手にケアさせ、DFを収縮させることで最後のElevatorへのケアを難しくさせている。

 

 

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Curl Open (1:02) 

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逆サイドへのAway Screenから、オープンになったスクリナーへパスする形。

Celticsはこのまま5のシュートでフィニッシュしているが、他の動きとの組み合わせも期待できるフォーメーションだろう。

 

3 Rip (2:03)

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5を逆ウィングに置き、1-2-4ラインを作る。

2が同サイドコーナーにSpot up、4が逆サイドポストにPost up、1→5スクリーン。

1→5のスクリーンは、相手のケアの仕方次第では5のダイブも有効になるだろう。(Milwaukee Bucks "Three")

基本的に相手はダイブを警戒するので、図のように5がフレアしてボールを受ける。

次に5→1のハンズオフと3→4のスクリーン。

4にボールを入れる基本線以外にも、3と4がClearoutして1がペネトレイトするオプション、ロールする5に入れるオプション、5→3のスクリーン(STS)などが考えられよう。

 

 

One Out (5:39

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1→4スクリーンからの5→1スクリーン(STS)を基本線にしたBLOB。

ファーストチョイスは1の3Pだが、1のカウンタードライブ、5のDFがチェックを試みた場合の5へのパスなども狙えるし、最初に3→4のパスから4&2のオフェンスに展開するという方向性も考えられるだろう。

 

 

Baseline Double (7:47)

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1→4→3でトップにボールを置いてから、2→1スクリーンと4&5→2のSTS&Staggerを作る形。

2のCurlと5のスクリーンの二段構えで4が確実にパスアウトを受けられるように仕向けているところが良いし、STSStaggerを組み合わせるという発想も秀逸なもの。

この後の展開としては、5が逆サイドにPost upしてからの4→2のChaseなどが考えられるだろう。

 

 

Three Comeback (9:40)

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4のコーナーSpot up、3→2スクリーンからの5→3 STSという形。

4-3-5の並びはある程度ランダムでも機能する。

4、2、3のケアを万全にすると5のSlip inなどに対応困難になるというところもミソ。

 

 

Triangle (11:44)

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2→4 Ripと5→2 STSが基本線。

スクリナーの5のギャップも狙える他、右図のように、4が逆を突くパターンもあり、極めてシンプルであるにも関わらず守りにくいフォーメーションになっている。

また、1→2→5、1→4→5という合わせの形も頻出かつ重要。

他にも、基本の形をまったく逆にして、ヘルプサイドのコーナーへパスアウトする形もある。(Memphis Grizzlies "Base Weak")

 

 

Funnel (16:35)

 

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左図は3&5→2のStaggerと4→3のSTSの組み合わせである。

右図はその逆を突き、2と3が本来の逆の方向へカッティングするパターン。(基本的には、2のカッティング方向に合わせて3がその逆へ動くという形になる)

相手の読みに合わせてフレキシブルに使い分けることができる。

 

 

Dummy Curl (20:25)

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3が裏側へシールし、そこにロブパスを飛ばすパターンと、3がカットアウトすると見せかけて再びCurlをしかけるパターンの二つがある。

極めてシンプルな動きであるが、2と4のスペーシング及びDecoy(2と4の間でのスクリーンを掛けるフェイクや、2と4の位置交換など)と、5がいつでもダイブできる態勢をとっていることにより、容易に3にボールが入る形になっている。他チームもたびたび模倣しているプレーである。

 

 

Curl DHO (20:59)

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先に挙げたDummy Curlを1stオプションとしつつ、その後の展開を狙ったもの。

5→1のDHOと4→2Ripの組み合わせ。

もちろん、これ以外にも様々なDummy Curlからのパターンがありうるだろう。

例えば、5→1のDHO後に、3がカットアウトではなく3→5のRipを狙うパターンがある。(Tront Raptors "DHO Rip")

 

 

DHO Double & Lob Counter (24:43)

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5→2のRipから4→5パス、5→1のDHOから4&5→2のStaggerに移行するムーブ。

そのカウンターとして、2→5のRipを組み合わせる形がRob Counterになる。

Double StaggerにカウンターでRipを組み合わせるパターンはかなり効果的。

 

 

……こうして概観すると、Flat DoubleやStack Double、Dummy Curl、3or4人のLineといったコンセプトが多くのチームで共有・活用されており、またTriangleとFunnelのような極めて似たコンセプトが採用されているケースもあることがわかる。

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