現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

基本ムーブメント、セットオフェンス、DFシステム、ゾーンアタックなどを日々研究・解説しています。

おすすめHalf Court Set / Horns Set (Elbow Series) / ATO Set 紹介

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今回は、筆者がおすすめするセットオフェンスを紹介していく。

最初に断っておくが、現代バスケットボールの基本的な動きで既に紹介したセットオフェンスや、スパーズ・モーション(Motion Weak, Motion Strong, Motion Loop)などは省略しているため、まずはそちらをご覧いただきたい。特に多くのHalf SetやHorns Setは、スパーズ・モーションと類似したセットアップが意識されている

また、ムーブメントの用語も、現代バスケットボールの基本的な動きに準拠しているため、併読することをおすすめする。

 

Half Court Set

 

www.youtube.com

Motion Weak Fist (0:24)

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Motion Weakの形から、クロススクリーン・ユーザーの4がサイドピックに向かう形。

形式的にはWedge Rollと似た形となっている。ハンドラーがリジェクト・ドライブを行った場合、特にカバーしにくい構造。

 

Motion Weak Seal (0:44)

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Motion Weakの本来の形(3→4のクロススクリーン)を崩し、3がシールする形。

インサイドよりもG-Fにサイズのギャップがある、ないしG-Fがポストプレーに長ける場合に有効なオプションである。

 

 

One Down (2:50)

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Motion Strongの形から、4ではなく1がポストアップしてくる形。

1がポストプレーに長けていたり、1でミスマッチがあるときに有効なプレー。

Motion Weak Sealと似たコンセプトのフォーメーションである。

 

 

DHO STS (5:24)

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Motion Strongと同じ起点から、Zipper Cut ⇒ 5→3DHO & 1→4クロススクリーン ⇒ 5→1ダウンスクリーン(STS)

①DHOを絡めることでパサー(3)へのプレッシャーを抑制している、②シューター(1)の移動範囲が通常のSTSより大きくケアしにくい、③1→4のクロススクリーンや、5→3のDHOによってミスディレクションされ、1のケアに遅れが生じやすい、といった特徴がある。

 

 

 

Drible Drag Pindown (5:49)

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3&2のOverUnderに、5→1のDragを組み合わせたフォーメーション。

Invertの他にも、ボールサイドカットする3にそのまま入れて攻めるという崩しや、スクリナーの4がSlip inするといった崩しもあり得る。

 

 

Rip DHO (10:12)

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Ripムーブの後、RipスクリナーがDHO(あるいはパス&ピック)を受けるフォーメーション。DHOをスルーして、Diveした3のポストにボールを入れるというオプション(Rip DHO Seal)がある。

RipやRubにおいて、スクリナーがDHOやパス&ピックを受ける形は頻用される。

 

 

Slice Double (11:09)

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Motion Strongと同じ起点から、4&5→2のDouble Stagger ⇒ 4&5→1のDouble Staggerを行うフォーメーション。

地味に1 Seal (1のポストアップを狙う形)にもなっている他、1 Seal Clearout (Seal Screen) を利用して3がペネトレイトを仕掛けるという"崩し"もあり得るだろう。

 

 

Fist Spread Down (12:45)

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2→5→1のWedge Rollと4→2のダウンスクリーンを組み合わせたフォーメーション。

4→2のスクリーンが囮となって、ボールハンドラー(1)がかなり深くペネトレイトできるほか、逆側の人の少ない方(WeakSide)へドライブする形の"崩し"も有効になる。

また、二番目の図のようにPNR(Fist)スクリナーがSlip Outして広いスペースを攻める形も有効である。

 

 

Veer (13:49)

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Wedge RollをSlipして、ヘルプサイドのPindown(Away)に向かうフォーメーション。

それを崩してFloopyに移行するパターンもある。

 

 

Weave (15:12)

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Weave=DHOを繰り返すフォーメーション。チームによって様々な形のWeaveセットがある。GSW Weaveの特色は、最後のWeaveにボールスクリーンをセットする点だろう。DHOにボールスクリーンを合わせる形は、Pistol Actionなどでもよく見られる頻出のムーブであり、ギャップが生まれやすい。

 

 

Boston Celtics "Indy Rip"

www.youtube.com

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DHO&RipからFlex(STS)へ移行するフォーメーション。

DHOに何かしらのスクリーンを組み合わせるというアイデア自体はPistol ActionやGSW Weaveにも共通するもの。

 

 

Spurs Shuffle

www.youtube.com

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サイドチェンジとRipの組み合わせ(Shuffle Motion)から展開されるオフェンス・フォーメーション。図の通り、最後の展開はSTSStaggerが用いられ、その後は基本的にChase(左図の場合は4→3のPNR、右図の場合は4→1のPNR)に移行する。

 

Snap Series

www.youtube.com

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5Topからの1→5 Flipを起点にしたフォーメーション・シリーズ。

PindownやAway+PNR(Chicago play)、Rubなどの種々のムーブメントを利用した多様なフォーメーションを持つ。

 

 

www.youtube.com

Point 2 Spain (9:36)

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Point 2(4と5によるDouble Stagger)からSpain P&Rに移行するオフェンス。

Point 2は、極めてシンプルなシステムながら、引用先動画のような多彩な展開を持つフォーメーションである。

 

Point 2 Rip (11:02)

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Point 2のBack door(Reject)パターンから、2→5 Ripに移行するフォーメーション。

2が自分のマークマンにも体を当てつつ、Screen your own man気味にセットするのがコツ。

 

 

Corner Series (Stunt STS) (43:53)

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1→4のFlipから、5→1のボールスクリーン、3→4のRip、5→3のSTSを組み合わせた形。

ちなみにCorner Seriesは、4にパスしてからの1→2 Awayが基本線で、1→4 Flipはセカンドオプション。

動画では5がDJなので、5が空けられて攻めづらくなっているが、5にシュート力のあるプレーヤーを配置するとより攻めやすくなるだろう。

 

 

Horns Set (Elbow Series)

Horns Rub

www.youtube.com

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HornsのElbowエントリーから、Rubに移行するフォーメーション。

Rubユーザーにボールが入らない場合にRubスクリナー(1)がハンズオフに向かうところまででワンセット。

 

 

Oklahoma City Thunder Horns Dive

www.youtube.com

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HornsのPNRエントリーからPop&Diveを行う形。

もう一人のダイブによって、Popへのローテーション(Big Switch)が抑制されるというところが肝。

 

 

Elbow away / Elbow away double (0:00)

www.youtube.com

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HornsのElbowエントリーから、AwayないしDouble Staggerに移行するフォーメーション。

構造自体は極めてシンプルであるが、現代バスケットボールの基本的な動きで強調したように、AwayやDouble Staggerにはそれぞれ複数のバリエーションがあり、これらをすべて守ることはほとんど不可能であることから、状況に応じて適切なバリエーションを用いることが重要になる。

 

Elbow Get (2:05)

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HornsのElbowエントリーから、5→4 PNRに移行するシンプルなフォーメーション。

型通りPFにボールを入れるというわけではなく、そのラインナップで最も1on1の強い人物を4のポジションに置いて行うのが理想であり、一般的である。

 

Golden State Warriors - Elbow Boston

www.youtube.com

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Elbow away Doubleを起点にしたフォーメーション。

2がカリー、3がクレイ、4がKDという配置であるこの形から繰り出されるThree men playは、極めて守りづらい形となっている。

 

Elbow Quick

www.youtube.com

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Hornsからボールハンドラー(1)がWingにドリブルエントリーし、ElbowにパスしてからTwist→パス&3P or パス&ピック or DHO に移行するムーブ。

派生として、以下のように逆サイドで4→2 Awayを試みるパターンもある。

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Elbow Flare

www.youtube.com

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Hornsエントリーから4→2スクリーンと3のサイドチェンジ、1→2→4でElbowにボールを置き、2→1 Splitから、5→2 Flareに移行するフォーメーション。

3のClearに加えて、2→1 Splitによるミスディレクションのおかげで、最後の5→2 Flareに大きなギャップを作りやすい。

5→2 Flareでは、相手のディフェンスの配置に応じたSpot upが必要である。

また、2のWiperムーブ、5のFlare Slipなども有効となってくるだろう。

 

 

Elbow Split Elevator

www.youtube.com

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Hornsの形からElbowにボールを入れSplitを行い、サイドチェンジの後にElevatorをセットするフォーメーション。

Elevator全般に共通する備考事項として、Elevatorユーザーがケアされるときは大体インサイドDFがSwitch Outしている場合が多く、Elevatorスクリナー(4or5)にギャップやミスマッチが起きていることがしばしばあるため、その部分を狙うことも意識する必要がある。

  

 

ATO Set

Golden State Warriors ATO Rip

www.youtube.com

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所謂Box Offenseの形から、Ripムーブに移行するATOセット。GSWの名物セットである。筆者的には4→1のFlare Screenも合わせればより狙いどころの多い形になると考える。

 

 

Golden State Warriors ATO Special "LA Rip" 

www.youtube.com

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UCLA CutのユーザーがウィングへRipを仕掛ける形が主軸のATOセット。ボールサイドを手厚く守れば守るほど、後のサイドチェンジ&Step-up BallScreenが守り辛くなり、極めて守りづらいコンセプトのフォーメーションとなっている。

 

 

Chin (2:25)

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RipからPNRに移行するATO Set。4のダウンスクリーンによって2がより近い位置でボールを持てるようにしていたり、1がボールサイド・コーナーに入ることで3へのRobが通りやすくなっていたり、3のRobを5のマークマンにケアさせることで5→2のPNRが守り辛くなっていたり、5→2のPNRに対して4が(ウィングへ)Replaceしたりと、色々と考えられたフォーメーションになっている。

 

 

Zip Backdoor (0:51)

www.youtube.com

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Zipper Cutをケアされた際に、バックドアを狙うプレー。

これ自体が一つのセットというよりは、Zipper起点のすべてのATOセットに事前につけておきたいオプションであるというべきだろう。

 

 

Boston Celtics "STS" (2:12)

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Zipper Cut ⇒ 5→2 Fist ⇒ 3→4スクリーンからの5→3 STSというフォーメーション。

このZipper⇒Fist⇒STSは、Zipper起点のオフェンス・セットとしてはかなりオーソドックスな組み合わせだが、守り切るのは難しい。

 

 

Rip Double (3:20)

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2→4 Rip ⇒ 3&5→2 Double Stagger ⇒ 5→2 Chase

RipにSTS型のStaggerをかけるのも、StaggerからChaseに移行するのも、頻出のフォーメーション。

 

 

Zip Thunder Backdoor (4:22)

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Zipper Cut ⇒ 1→2 Flip ⇒ 1→4 Thunder ⇒ 4→2 DHO-Backdoor

Zipper Cutからサイドチェンジし、Thunderを仕掛けるというコンセプトはかなり頻出。

最後のDHO-Backdoorは、当然他のDHOオプションやパス&ピックで代替できる。

 

 

プリンストン・オフェンス研究中

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かつて米国バスケ界を席巻し、今なおそのコンセプトが生かされているモーションオフェンス・システムに、プリンストン・オフェンスがある。

ただし、一言でプリンストン・オフェンスと言っても、ShuffleやChinを組み込んだものや、UCLA Cutを取り入れるかそうでないか等、あまりに多くのバリエーションがあり、最大公約数的な形を提示するのは簡単ではない。

しかし今回、敢えてその困難な道に挑戦してみたいと思う。

 

多くのプリンストン・オフェンスにおおよそ共通するコンセプトを挙げていこう。

 

①4out1inの形から、フローチャート式に展開する。

②Backdoorを中心とするリム方向へのカッティングを積極的に狙い、それをケアさせた上でのオープン3Pも狙う。Flare Screenを組み込むのも一般的。

③広いスペーシングを生かし、ボールスクリーンやDHOからのRoll inやKick out 3Pも狙う。

 

こうしたコンセプトが大体含まれていれば、プリンストン・オフェンスと呼称される(自称・他称問わず…)ため、実に様々な形のプリンストン・オフェンスが存在している。

また、各チームのプレーヤーの性質やオフェンス方針に従って自由に改良していくことも許容されるだろう。

今回はあくまで、「ありがちな」プリンストン・オフェンスの"一例"を提示してみることにする。タイトルの通り、筆者はまだ「プリンストン・オフェンス研究中」であるため、この暴挙をどうかお許し願いたい。

 

Princeton Entryの基本形

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多くのプリンストン・オフェンスは、上図の形でスタートすることが多い。

ポストマン(5)側にオフボールマンが2人いる場合は、ボールハンドラーが指示して、2人のうちの1人を逆サイドにカットアウトさせる……といった臨機応変な対応が肝要である。

 

Princeton offenseの3パターン

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上図の通り、最初に三つのパターンへ分岐していくのが一般的である。

Ⅰ Elbow Entry

Ⅱ Wing Entry

Ⅲ Side change Entry

ここからはパターン別のオプションを概説していく。

 

 

Ⅰ Elbow Entry

 

1 backdoor

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ハイポストへパスしたPGがバックドアを試みた後、ポストマンがパス&ピックへ移行するオプションである。

図の通り、バックドアなどでリム方向へカットしたプレーヤーは、コーナーへとSpot upするのが基本ルールである。

ポストマンのパス&ピックのケースは今後も頻出だが、いずれもDHO(Dribble Hands-off)への代替が可能である。

(DHOの基本パターンについては、現代バスケットボールの基本的な動きで解説済み。特にプリンストン・オフェンスでは、厳しいマークに対して積極的にバックドアを仕掛けることが重要視されている)

上図ではヘルプサイド・ウィングの3にパス&ピックを仕掛けているが、ボールサイド・ウィングの2にパス&ピックを仕掛けても良い。

 

1→3 away

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パスしたPGが、ヘルプサイド・ウィングのプレーヤーにAway Screenをかけるオプションである。図のようなバックドア(あるいはリジェクト)のパターンの他、フレアやカールといったパターンも有用だろう。(Awayの基本パターンも現代バスケットボールの基本的な動きで解説している)

上図のように、ポストマンはヘルプサイド・ウィングの1、あるいはボールサイド・ウィングの2へパス&ピックやDHOを試みる。

 

1→2 away

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パスしたPGが、ボールサイド・コーナーへAway Screenを仕掛けるパターンである。

基本的にカッティングを仕掛けたプレーヤーはコーナー等へSpot upするという原則があることを先ほど述べたが、この場合はヘルプサイドのウィングとコーナーが既に埋まっているので、図のような『ヘルプサイド・トライアングル』の形成へ移行する。(2が4にクロススクリーンを仕掛けるといったパターンも有効かもしれない)

ポストマンのパス&ピックないしDHOは、上図のように1に対して仕掛けてもOKだし、3に対してでも良い。

 

 

Ⅱ Wing Entry

 

UCLA→Flare Screen

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ボールサイド・ウィングへパスした後、5→1のUCLAカットに移行し、スクリナー(5)へパスしてヘルプサイドへの展開を狙うパターンの一つである。

上図では4→3のFlare Screenを例示しているが、3→4のAway Screenなども十分選択肢としてあり得る。

 

Post up→Split

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ボールサイド・ウィングにパスをした後、ポストマンがローポストへPost upし、Split Cutへのパスを狙うパターンである。(Split Cutをきちんとケアされる場合は、たいていポストマンへのヘルプが手薄なので、その場合ポストマンは1on1を仕掛ける。)

3のバックドアのようなリムへのカットを生かすため、図のようにポストマンはローポストのやや外側にPost upするのが好ましい。

図ではSplit Screenのユーザーである3のバックドアを例示したが、3が普通にスクリーンを使い、スクリナーの2がバックドアを仕掛けるパターンも十分に考えられる。(3の動きに合わせて、2はフレアを仕掛けるかバックドアを仕掛けるか臨機応変に判断するのが望ましい)

 

 

Ⅲ Side change Entry

 

Flare Screen

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ヘルプサイド・ウィングへ展開のパスを出したPGに対して、ポストマンがFlare Screenを掛けるオプションである。

図では省いているが、もしフレアカットした1へパスが飛んだ場合、5→1のPNRに移行するといったパターンが考えられる。

 

Chin offense

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図の通り、ヘルプサイドへの展開の後、5→1のShuffle Screenを軸にオフェンスするオプションである。

上図ではその後、5→3のFlare Screenを例示したが、3→5のAwayや、3がスペーシングしたうえで5→4のPNRなども有り得るパターンである。

 

上述したパターンをフローチャート化したのが下図である。

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フローチャートの末尾に括弧付きで書いた通り、上述したオフェンスパターンからPrinceton Entryへ回帰することで、フローチャートを"巻き戻す"ことができる。

今回のパターンで行くと、本来ならパス&ピックに移行するところを、パスアウトからPrinceton Entry再形成へ移行することで、新たに別のPrinceton offense patternへ移行することが可能になる。

 

 

繰り返しになるが、今回記述したプリンストン・オフェンスは、あくまで数あるパターンのうちの一つの"可能性"に過ぎない。

現実に運用されているプリンストン・オフェンスを参考にしつつ、自チームに合うものを模索していくのが重要だと考えられる。

 

 

参照サイト・動画

プリンストンオフェンスとは 解説 : bball Connects

【NBA】LALに導入できなかったプリンストン・オフェンス ( バスケットボール ) - I LOVE NBA NAKのブログ - Yahoo!ブログ

Breaking Down the Most Efficient Princeton Offense in the NCAA: Richmond Spiders - YouTube

NBA: Princeton Offense Series - YouTube

Air Force Princeton Offense - YouTube

Chin Offense - Princeton offense run by high school team - YouTube

 

 

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リンク紹介―ミート再考 / P&R passing / スモールラインナップ再考―

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今回は、以下の三つの記事(ないし動画)を紹介したいと思う。

 

goldstandardlabo.com

日本のバスケットボール教育でよくありがちな「ボールミートでズレを作る」という思想を批判した記事である。

実際のナショナルチームの試合を取り上げており、ミートでギャップを作って攻めたプレーは少なくて、多くはスクリーンを使ったズレからのドライブであったり、ドリブルドライブやフェースドライブ(対面してからのドライブ)といったプレーが多いということをデータで示している。

 

このため、ミートでギャップを作るプレーは、あくまでごく限られたシチュエーションのプレーであり、したがってドリブルドライブやフェースドライブをきちんと想定した練習の必要性が強調されている。

 

 

 

www.youtube.com

Pick and Rollにおけるパスを細かく分類し紹介した動画である。ロールインに対するパス一つとっても、普通のパス、ロブパス、アーリーパス、レイトパス、ディープドライブ・レイトパスといった様々なパターンが網羅的に紹介されている。

もちろん、Rollへのパスだけではなく、PopやReplaceへのパスなども事細かに分類・紹介されており、PNRプレーを極めるにあたって視聴の欠かせない動画と言えるだろう。

 

 

 

college-hoops-japan.blogspot.jp

Golden State Warriorsのビッグマン不在のラインナップ(Death Squad、スモールラインナップ)を取り上げ、「サイズ自体は小さいが、ウィングスパン・スタンディングリーチ、ジャンプ力でDF力がカバーされている」という”身も蓋もない”事実が解説されている。

裏を返すと、単純なサイズよりも、腕の長さや跳躍力を加味した「トータルのリーチ」がDF力において重要であることが示唆されている。

 

 

 

ゾーンアタック(ゾーンオフェンス)の四つのコンセプト

今回は、いくつかの動画やサイトを参考にしながら、ゾーン・ディフェンスに対する攻撃方法(ゾーンアタック、ないしゾーンオフェンス)に通底する以下の四つのコンセプト(理念)を解説していこうと思う。

 

①DFエリアを制約するシール或いはスクリーン(Seal or Screen)

②ベースラインのDFを外に引き出す(Stretch DF)

③ギャップへのドライブで崩す(Punching or Penetration)

④ポジションチェンジを多用して動きで崩す(Motion / Flow)

 

※青はオフェンス、オレンジはディフェンス、緑はパス、赤はドリブル

 

①DFエリアを制約するシール或いはスクリーン(Seal or Screen)

上記に見出しで紹介した4つのコンセプトの中で、最重要の攻撃理念になる。

ゾーンDFでは、各DFがそれぞれ固有のDFエリアを持っている。

もしシールやスクリーンによって動きを制限されたら、当然そのDFの管轄エリアはフリーエリアになってしまうわけだ。

特に、2-1-2や2-3といったゾーンでは、中心のDFがリムプロテクトの要になる。この場合、中心のDFに対する適切なタイミングでのシール或いはスクリーンによってClear Outすることができれば、簡単にペイントエリアのギャップを作ることが出来る。(もちろん、3秒バイオレーションには注意しなくてはならない)

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他にも、外側のDFに対するフレアスクリーンも有効だ。フレアスクリーンによって、本来の守備範囲へのクローズアウトが阻害されることによって、ワイドオープンなショットや、遅れたクローズアウトに対するカウンタードライブが可能になる。

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また、ボールスクリーンをセットすることで、本来フォローすべきDFを引きはがし、他のエリアのDFを引き出して、相手のDFシフトを強制的に崩す、といった動きも有効になる。

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②ベースラインのDFを外に引き出す(Stretch DF)

ゾーンDFは基本的に、ベースラインを攻めさせず(ノーライン原則)、DFの手厚いミドル方向に攻撃させて潰すというコンセプトを共通して持っている。

したがって、ベースラインのDFを引き伸ばし、そのギャップにボールを入れることが出来れば、DFの手薄なところを攻めることができ、イージーシュートが生まれやすくなる。

 

特に、①Seal or Screenの『中心DFへのClear Out』と組み合わせることによって、ペイントエリア付近でのショットを生みやすくすることが出来る。実は、①で紹介したフォーメーションは、②のコンセプトも活用されているのである。

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③ギャップへのドライブで崩す(Punching or Penetration)

基本的に無策のドライブインはゾーンDFの餌食だが、DF間のギャップに入り込み、DFを引き出してパスを捌くようなドライブ(パンチングドライブ)はオフェンスの起点としてなお有効である。

 

ギャップへのドライブで二人目のDFを引き出した暁には、最新NBA戦術紹介④ Attack one-pass-away defence で解説したように、Spot up, backdoor, move behind, Flare Screenといったオプションでシュートメイクをすると良い。

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ギャップへのドライブを容易にする一つの方法としては、①Seal or Screenで挙げたボールスクリーンが極めて有効であることも強調しておきたい。

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また、ゾーンDFはミドル方向のDFは手厚い一方で、ライン方向(ベースライン側)のDFは手薄だ。したがって、ライン方向にペネトレイトすることが出来れば、イージーバスケットを作りやすくなる。

 

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④ポジションチェンジを多用して動きで崩す(Motion / Flow)

アウトサイドはトップ・両ウィングを目まぐるしくポジションチェンジし、インサイドはローポスト・ハイポストの位置を交換しあうことで、ポストにボールを入れて、ハイロー、ローハイ、アウトサイドのダイブないしアウトサイドへのキックアウトと言ったプレーを目指すコンセプトである。

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適宜アウトサイドがコーナーにも入る所謂オーバーロードの形へ変化する場合も多い。

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 最もよく知られているゾーンアタック・コンセプトであり、今なお有効ではあるのだが、非常に有効なコンセプトである①Seal or Screenの併用・活用がシステム上難しいというデメリットがある。

 

 

参考動画・サイト

Gregg Marshall Wichita State Zone Offense - YouTube

 

Best Zone Offense Versus 2-3 Zone - YouTube

 

How to Embarrass a 2-3 Zone Defense - YouTube

 

ゾーンオフェンス(ゾーンアタック)に生きる2つのコンセプト

 

追記:2017/9/2

Zak Boivertによるゾーンアタック・セット「Smashシリーズ」の解説動画を紹介する。上述の四つのコンセプトを想起しつつ見るととても参考になるはずだ。

www.youtube.com

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スイング&サイドチェンジでベースラインDFを引出し、中心DFへのClearoutを組み合わせるパターン。

 

 

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中心DFにダウンスクリーンをかけてClearoutするパターン。

 

 

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スイングするプレイヤーが、スイングをキャンセルし、フレアスクリーンを貰うパターン。

 

 

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ボールスクリーンを行うパターン。他のSmashシリーズが失敗した場合の最後のオプションとしても使われている。

バスケットボール関連のおすすめリンク

今回は、筆者がよく参照しているおすすめのサイト等を紹介したいと思う。

 

ameblo.jp

森高大・アルバルク東京アシスタントコーチ(執筆時点)のブログ。アメリカのウェストバージニア大学でコーチ修行をしていたころの記事がほとんど。どうでもいいことだが、筆者と同じ高校出身らしい。

以下、おすすめ記事の一部を紹介。

能力のないチームが能力のあるチームと戦うには

ボールスクリーンの判断ドリル

15種類のオンボールスクリーンディフェンス

実践的シューティングドリルの紹介(オフボールスクリーン)|コーチMのブログ

脳がどのようにして運動を制御しているかを知ることで、試合に生きるスキル獲得を目指す

 

 

www.youtube.com

NBAの動画を主に戦術やセットオフェンスを中心にまとめているYoutubeチャンネル。

Spurs、Warriors、Celtics、Rocketsなどの膨大なVideo Playbookを掲載しており、とても一朝一夕には噛み砕けないと思うが、現代バスケットボールオフェンスを"知る"上で極めて有用と思われる。

以下おすすめ動画を一部紹介。

Steve Kerr Golden State Warriors Playbook - YouTube

Brad Stevens Boston Celtics Playbook - YouTube

Houston Rockets Point Series - YouTube

 

 

goldstandardlabo.com

複数著者が寄稿するタイプのバスケットボール関連コラムのサイト。

戦術関連で高質なコラムがいくつかある。以下、おすすめコラムをいくつか紹介する。

【一般寄稿】ビデオセッション −VCUのプレスディフェンスの秘訣をキーワードから探る− byコーチP 

【一般寄稿】ジョン・ストックトンとカール・マローンのピックアンドロールはもう古い! byコーチP

ゾーンオフェンス(ゾーンアタック)に生きる2つのコンセプト

 

 

Advanced NBA Concepts (最新NBA戦術紹介)まとめ

mbtr.hatenablog.com

インサイドがシールしてドライブコースを作るプレー(Clearout)の紹介。

 

 

mbtr.hatenablog.com

各種スイッチDFコンセプトの紹介。

 

 

mbtr.hatenablog.com

スクリーンに合わせた逆サイドへのドライブと、ポストダブルチームに対するメタ戦術としてのコーナーカットの紹介。

 

 

mbtr.hatenablog.com

ドライブのヘルプDFに対するオフェンスオプション、各種四種類の紹介。

 

 

mbtr.hatenablog.com

ポストドライブやポストでのロールターンに合わせた、"ワンテンポ遅らせた(Late)"ポストダブルチームの紹介。

 

最新NBA戦術紹介⑤ The late post double team

Coach Danielチャンネルから、Advanced NBA Concepts part5 "The late post double team"を紹介する。
 
 
The late post double team
 

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インサイドがポストでボールを持ったとき、そのインサイドのポスト1on1の開始を待って、もう一人のインサイドダブルチームにいく("late" post double team)というディフェンスである。
"late"と銘打たれたように、ボールを受けた段階や、パスを見ている段階ではダブルチームに行かず、ドライブインやロールターンに合わせてダブルチームに行くのがポイントである。
 
もしポストのボールハンドラーがまだパスを見ている段階でダブルチームに行ってしまうと、簡単に他のオフェンスにパスを合わされてしまうため、禁忌である。(動画内では失敗例も紹介されている)
また、ポストのボールハンドラーがドライブをキャンセルして、リトリートドリブルに移行した場合も、ヘルプDFはダブルチームをキャンセルして、元のマークマンに戻らなければならない。
 
加えて、ダブルチームを行っている間、オフボールDFのディナイ(特にヘルプサイドのペイントエリアのディナイ)がきちんと出来ているかが重要である。