現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

基本ムーブメント、セットオフェンス、DFシステム、ゾーンアタックなどを日々研究・解説しています。

ゾーンアタック(ゾーンオフェンス)の四つのコンセプト

今回は、いくつかの動画やサイトを参考にしながら、ゾーン・ディフェンスに対する攻撃方法(ゾーンアタック、ないしゾーンオフェンス)に通底する以下の四つのコンセプト(理念)を解説していこうと思う。

 

①DFエリアを制約するシール或いはスクリーン(Seal or Screen)

②ベースラインのDFを外に引き出す(Stretch DF)

③ギャップへのドライブで崩す(Punching or Penetration)

④ポジションチェンジを多用して動きで崩す(Motion / Flow)

 

※青はオフェンス、オレンジはディフェンス、緑はパス、赤はドリブル

 

①DFエリアを制約するシール或いはスクリーン(Seal or Screen)

上記に見出しで紹介した4つのコンセプトの中で、最重要の攻撃理念になる。

ゾーンDFでは、各DFがそれぞれ固有のDFエリアを持っている。

もしシールやスクリーンによって動きを制限されたら、当然そのDFの管轄エリアはフリーエリアになってしまうわけだ。

特に、2-1-2や2-3といったゾーンでは、中心のDFがリムプロテクトの要になる。この場合、中心のDFに対する適切なタイミングでのシール或いはスクリーンによってClear Outすることができれば、簡単にペイントエリアのギャップを作ることが出来る。(もちろん、3秒バイオレーションには注意しなくてはならない)

f:id:ocum2013-041:20171119184334p:plainf:id:ocum2013-041:20171119184341p:plain

 

他にも、外側のDFに対するフレアスクリーンも有効だ。フレアスクリーンによって、本来の守備範囲へのクローズアウトが阻害されることによって、ワイドオープンなショットや、遅れたクローズアウトに対するカウンタードライブが可能になる。

f:id:ocum2013-041:20171119184305p:plainf:id:ocum2013-041:20171119184312p:plain

 

また、ボールスクリーンをセットすることで、本来フォローすべきDFを引きはがし、他のエリアのDFを引き出して、相手のDFシフトを強制的に崩す、といった動きも有効になる。

f:id:ocum2013-041:20171119184400p:plain

 

②ベースラインのDFを外に引き出す(Stretch DF)

ゾーンDFは基本的に、ベースラインを攻めさせず(ノーライン原則)、DFの手厚いミドル方向に攻撃させて潰すというコンセプトを共通して持っている。

したがって、ベースラインのDFを引き伸ばし、そのギャップにボールを入れることが出来れば、DFの手薄なところを攻めることができ、イージーシュートが生まれやすくなる。

 

特に、①Seal or Screenの『中心DFへのClear Out』と組み合わせることによって、ペイントエリア付近でのショットを生みやすくすることが出来る。実は、①で紹介したフォーメーションは、②のコンセプトも活用されているのである。

f:id:ocum2013-041:20171119184334p:plainf:id:ocum2013-041:20171119184341p:plain

 

③ギャップへのドライブで崩す(Punching or Penetration)

基本的に無策のドライブインはゾーンDFの餌食だが、DF間のギャップに入り込み、DFを引き出してパスを捌くようなドライブ(パンチングドライブ)はオフェンスの起点としてなお有効である。

 

ギャップへのドライブで二人目のDFを引き出した暁には、最新NBA戦術紹介④ Attack one-pass-away defence で解説したように、Spot up, backdoor, move behind, Flare Screenといったオプションでシュートメイクをすると良い。

f:id:ocum2013-041:20171119184352p:plain

 

ギャップへのドライブを容易にする一つの方法としては、①Seal or Screenで挙げたボールスクリーンが極めて有効であることも強調しておきたい。

f:id:ocum2013-041:20171119184400p:plainf:id:ocum2013-041:20171119184418p:plain

 

また、ゾーンDFはミドル方向のDFは手厚い一方で、ライン方向(ベースライン側)のDFは手薄だ。したがって、ライン方向にペネトレイトすることが出来れば、イージーバスケットを作りやすくなる。

 

f:id:ocum2013-041:20171119184505p:plainf:id:ocum2013-041:20171119184520p:plain

 

④ポジションチェンジを多用して動きで崩す(Motion / Flow)

アウトサイドはトップ・両ウィングを目まぐるしくポジションチェンジし、インサイドはローポスト・ハイポストの位置を交換しあうことで、ポストにボールを入れて、ハイロー、ローハイ、アウトサイドのダイブないしアウトサイドへのキックアウトと言ったプレーを目指すコンセプトである。

f:id:ocum2013-041:20171119184543p:plainf:id:ocum2013-041:20171119184550p:plain

適宜アウトサイドがコーナーにも入る所謂オーバーロードの形へ変化する場合も多い。

f:id:ocum2013-041:20171119184557p:plain

 最もよく知られているゾーンアタック・コンセプトであり、今なお有効ではあるのだが、非常に有効なコンセプトである①Seal or Screenの併用・活用がシステム上難しいというデメリットがある。

 

 

参考動画・サイト

Gregg Marshall Wichita State Zone Offense - YouTube

 

Best Zone Offense Versus 2-3 Zone - YouTube

 

How to Embarrass a 2-3 Zone Defense - YouTube

 

ゾーンオフェンス(ゾーンアタック)に生きる2つのコンセプト

 

追記:2017/9/2

Zak Boivertによるゾーンアタック・セット「Smashシリーズ」の解説動画を紹介する。上述の四つのコンセプトを想起しつつ見るととても参考になるはずだ。

www.youtube.com

f:id:ocum2013-041:20170902113146p:plain

スイング&サイドチェンジでベースラインDFを引出し、中心DFへのClearoutを組み合わせるパターン。

 

 

f:id:ocum2013-041:20170902113249p:plain

中心DFにダウンスクリーンをかけてClearoutするパターン。

 

 

f:id:ocum2013-041:20170902113332p:plain

スイングするプレイヤーが、スイングをキャンセルし、フレアスクリーンを貰うパターン。

 

 

f:id:ocum2013-041:20170902113417p:plain

ボールスクリーンを行うパターン。他のSmashシリーズが失敗した場合の最後のオプションとしても使われている。