現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

現代バスケットボール戦術研究(Modern Basketball Tactics Research)

基本ムーブメント、セットオフェンス、DFシステム、ゾーンアタックなどを日々研究・解説しています。

Advanced NBA Concepts (最新NBA戦術紹介)まとめ

mbtr.hatenablog.com

インサイドがシールしてドライブコースを作るプレー(Clearout)の紹介。

 

 

mbtr.hatenablog.com

各種スイッチDFコンセプトの紹介。

 

 

mbtr.hatenablog.com

スクリーンに合わせた逆サイドへのドライブと、ポストダブルチームに対するメタ戦術としてのコーナーカットの紹介。

 

 

mbtr.hatenablog.com

ドライブのヘルプDFに対するオフェンスオプション、各種四種類の紹介。

 

 

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ポストドライブやポストでのロールターンに合わせた、"ワンテンポ遅らせた(Late)"ポストダブルチームの紹介。

 

最新NBA戦術紹介⑤ The late post double team

Coach Danielチャンネルから、Advanced NBA Concepts part5 "The late post double team"を紹介する。
 
 
The late post double team
 

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インサイドがポストでボールを持ったとき、そのインサイドのポスト1on1の開始を待って、もう一人のインサイドダブルチームにいく("late" post double team)というディフェンスである。
"late"と銘打たれたように、ボールを受けた段階や、パスを見ている段階ではダブルチームに行かず、ドライブインやロールターンに合わせてダブルチームに行くのがポイントである。
 
もしポストのボールハンドラーがまだパスを見ている段階でダブルチームに行ってしまうと、簡単に他のオフェンスにパスを合わされてしまうため、禁忌である。(動画内では失敗例も紹介されている)
また、ポストのボールハンドラーがドライブをキャンセルして、リトリートドリブルに移行した場合も、ヘルプDFはダブルチームをキャンセルして、元のマークマンに戻らなければならない。
 
加えて、ダブルチームを行っている間、オフボールDFのディナイ(特にヘルプサイドのペイントエリアのディナイ)がきちんと出来ているかが重要である。
 

最新NBA戦術紹介④ Attack one-pass-away defence

今回紹介するのは、Coach Danielチャンネルから、Advanced NBA Concepts part4、"Attacking when the defense helps one pass away on the perimeter"(ペリメーターでワンパスの距離にヘルプに来られた時どう攻めるか)である。
 
アウトサイドからのドライブにヘルプが来た場合の攻め方は、以下の四つに分類される。
 
①Spot up shoot or drive
②Cut back door
③Move behind the ball handler
④Flare Screen
 
 
①Spot up shoot or drive 
 
 

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一番シンプルなパターンで、ヘルプ(2DF)の元々のマークマン(2OF)にパスをさばき、そのギャップからシュートかドライブに移行するケースである。
 
 
 
 
 
②Cut back door
 
 

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2OFへのパスもケアしつつヘルプに来られた場合は、2OFがバックドアを仕掛けることで、イージーバスケットを作ることが出来る。
 
 
 
 
③Move behind the ball handler
 
 

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ボールハンドラーの後ろまで回り込むことで、2はワイド―オープン3Pを打つことが出来る。2のギャップを大きくするため、1が(x2に対する)スクリーンをセットするとより効果的である。
 
 
 
 
 
④Flare Screen
 
 

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x2にフレアスクリーンを仕掛けることで、2がワイドオープンになるパターンである。
これに対し、x5がローテーションして2をケアした場合、今度はスクリナーの5がフリーになる。(→Flare Slip etc...)
 
 

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最新NBA戦術紹介③ Drive with weakside screening & Corner to corner cut

今回も、Coach Danielチャンネルから、Advanced NBA Concpetsシリーズを紹介していく。
 
紹介するのは、Advanced NBA Concepts Part3から、以下の二つである。
 
①Drive with weakside screening
②Corner to corner cut
 
 
①Drive with weakside screening

 

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この戦術は、「オフボールスクリーンが起きている間に、その逆サイドへドライブして攻める」という極めてシンプルな代物である。
特にNBAでは盛んにスイッチDFが行われる関係上、スクリーンに対してDFが集中する場面が少なくない。したがって、こうした戦術は特に有用になる。
 
もちろん、ボールマンが一人でマークマンを抜き去る(get by)ことができるのが最低条件だ。
 
この戦術は、特にエースプレイヤーを生かすコンセプトとして重要になるだろう。
 
 
 
②Corner to corner cut
 

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これは、ポストアップに対するダブルチームに際し、逆サイドのアウトサイドがボールサイド・コーナーにカッティングすることで、ワイドオープンを作る戦術である。
上図でいくと、2DFが5OFをケアせざるを得ないというポスト・ダブルチームの構造上の欠陥を衝き、対応不可能なポイント(ボールサイド・コーナー)へ2OFが移動するという、いわゆる”メタ戦術”になる。
 
ポストプレーの極めて強いインサイドが所属しており、かつそのインサイドへのダブルチームを喰らった際に有用なムーブメントである。

最新NBA戦術紹介② Advanced switches

今回は、再びCoach Danielチャンネルから、Advanced NBA Concepts part 2より、"Advanced switches"を紹介したいと思う。
 
紹介されているスイッチDFは以下の三種類である。
 
①Bigs switch with each other
②2 switches in a row
③Switch on post ups
 
 
 
①Bigs switch with each other
 

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その名の通り、ビッグマン(4番と5番)同士のスイッチDFのことを指す。

上図では、ボールスクリーンに対する1DF-5DFのスイッチの後、4DFが5OFをケアし、5DFは逆サイドの4OFをケアする。この形のスイッチDFが最もギャップが小さくなる。
ただし、4OFがアウトサイドまでストレッチしている場合は、ギャップが大きくなり、オープン3Pが打たれやすいという難点がある。
似た理由で、スモールラインナップを相手にすると使いづらいスイッチDFであることに注意を要する。
 
また、以下のように、Pindown(Away)に対しても類似のスイッチDFを行うことができる。
 

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②2 switches in a row
 

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ボールスクリーンに対するスイッチの後、インサイドに出来たミスマッチをオフボールのスイッチで埋めるという形式のスイッチDFである。
 
実はこれは、Golden State WarriorsのスイッチDFコンセプトで紹介したTriple Switchとほぼ同じコンセプトのスイッチDFである。
 
 

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Triple Switchでも同様だが、二つ目のオフボールスイッチは、インサイドだけでなく、相対的にサイズの大きいアウトサイドが行う場合も多い。

 
 

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このスイッチの後も5OF-3DFのミスマッチではあるが、5OF-1DFのミスマッチよりも"相対的に"守りやすくなる。
 
 
③Switch on post ups
 
これは事実上、Golden State WarriorsのスイッチDFコンセプトEmergency Post Switch "Scram"と全く同じコンセプトのスイッチDFである。
 

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インサイドのミスマッチに対し、オフボールのインサイドDF(上図の場合は4DF)がスイッチに向かう形式である。

もちろん、②と同様、スイッチに向かうDFは相対的に大きいアウトサイドである場合もある。
 
また、スイッチすべきインサイドが既にボールを持っている状況(オンボールの状況)では、一時的にダブルチームに近い形をつくり、そこからスイッチに移行する。
 
 

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最新NBA戦術紹介① The Clearout

noteにて、シューターのためのムーブメント&セットバスケットボール・ドリルまとめを販売中。是非ご購読を。

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今回からは、YoutubeCoach Danielチャンネルから、Advanced NBA Conceptsというシリーズを紹介していきたいと思う。
 
直訳すると、「先進的なNBAの概念(哲学)」といった具合になるのだが、内容と日本語的わかりやすさを加味し、タイトルのように「最新NBA戦術」と"翻訳"することにした。
 
今回紹介するのは、Advanced NBA Concpets Part 1で紹介されている"The Clearout"である。
 
 
①The Clearout
 

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Clearoutとは、上図のように、インサイドが自分のDFにシールすることによって、GorFのドライブコースを作るプレーである。

試合の高速化やオフェンスにおけるアウトサイドの重要性が高まるにあたり、ポストを攻めるためのシール以上に、ドライブコースを作るシールが重要になりつつある。
これを反映して、Clearoutは様々な形で頻用されるようになっている。
 
 
 
②Clear Out in P&R's (not the screener clearing out)
 

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P&Rの際、P&Rスクリナーではない方のインサイドが、自分のマークマンにシールする形である。
前提としては、スクリナーがシューターであり、スクリーンの後ポップアウトする形を作るという条件がある。
これによって、スクリナーDFがアウトサイドへストレッチされて、インサイドのスペースが広がる。それに加えて残りのインサイドがClear Outすることで、ボールハンドラーのドライブコースが生まれることになる。
 
また、PNRの際にビッグマン同士がスイッチするBigs Switchというコンセプトに対しては、ヘッジDFをClearoutすることでドライブコースを作ることが出来る。

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③Clear Out in P&R's (the screener clearing out)
 

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文字と上図通り、P&Rスクリナーが自分のマークマンをClear Outする形である。ボールマン・ヘルプに出た自分のマークマンに適切な角度からシールすることで、ボールハンドラーのドライブコースを作ることが出来る。

 
これに加えて、以下のような形もある。
 

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これは、ボールスクリーンに行くというフェイントから直接Clear Outへ移行し、ボールハンドラーのドライブコースを作るという形である。

特にハイピックの場合は、インサイドはボールスクリーンに対してソフトヘッジで対応しようとするため、図のような位置関係になりやすく、簡単にドライブコースを作ることが出来る。
 
 
【追記:2018/12/21】
Put in the jail (Hostage Dribble)と組み合わせた"Jail Clearout"というパターンを、動画を追加してより詳細にご紹介しよう。

www.youtube.com

Put into the jail(Hostage Dribble)とは、下図のように、ボールスクリーンをオーバーで抜けてきたボールハンドラーDFを背中に背負って前に入らせないようにするプレーのことである。(jailは監獄、hostageは人質の意味)

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ここからさらにスクリナーがロールし、DropしているスクリナーDFをClearoutする。(下図) これがJail Clearoutである。

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Golden State WarriorsのスイッチDFコンセプト

以前、GSWのSwith Defenceが洗練されすぎている件についてにおいて紹介したGolden State Warriors Switching Conceptsについて、詳細な解説を行いたいと思う。
 
 
 
 
 
①Triple Switch
 

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ボールスクリーンに対してスイッチDFを行う際、最大の問題はインサイドのミスマッチである。
そこで、ボールスクリーン・スイッチの後、もう片方のインサイドDF(ここでは4DF)がオフボールでスイッチを行うことで、インサイドのミスマッチを解消する。
(ガード間でも、体格差がある場合、より体格の大きいガードがスイッチに向かうことで、ギャップを少しでも小さくする、といったことが試みられる。
例えば、GSWの場合、カリーがインサイドOFにマークしてしまった状況で、同じGのクレイがスイッチに向かうという場面があった。クレイの方が相対的に体格に勝るからである)
そうすると、インサイドのギャップが埋まり、ボールスクリーン・スイッチによって生まれる隙を潰すことができる。これがTriple Switchのコンセプトである。
 
 
 
 
 
②Emergency Post Switch "Scram"

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ボールスクリーンやオフボールスクリーンに対するスイッチDF等によって、インサイドにミスマッチが生まれたとき、近くのインサイドDF(あるいは体格に優れるアウトサイドDF)がスイッチに向かうことによって、インサイドのギャップを埋めるコンセプトである。

お察しの通り、先述のTriple Switchは、このScramとボールスクリーン・スイッチを組み合わせた動きである。
スイッチDFを多用する際、このScramが十分に行えているかどうかでインサイドを守れるかどうかに大きく差が出てくることになる。
 
 
③ICE to Switch
 

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ICEというDFは、上図の通り

「ボールスクリーンに対し、ボールマンDF(1DF)がベースライン方向でディレクション
→「スクリナーDF(5DF)がリムを守り、ボールマンDFはシュートチェックの責を追う」
→(その後、それぞれのマークマンに戻る)
というDFシステムである。
 
 
この形は、スクリナーDFがスクリナーのロールにも対応できるため、ボールスクリーンからのイージーバスケットを防ぐにあたって非常に優れた形のDFである。
 
GSWは、このnormal ICEに加えて、ICE to SwitchというDFオプションを持っている。

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ICEからSwitchに移行することによって、先ほどのICEの利点を生かしつつも、ボールマン及びスクリナーのギャップをさらに小さくすることに成功している。

(アウトサイドDFは、スクリナーに簡単なパスが通らないようにケアしながらスイッチを行う)
もしこれによって生じたインサイドのミスマッチが攻められそうになったら、先ほど紹介したScramによってインサイドギャップを埋めるという合わせ技も存在する。
 
 
 
 
 
④Switch the Pindown Curl
 
 

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ダウンスクリーン・カールに対し、スイッチを行うことでギャップを最小化するDFオプションである。
この場合、スクリナー(主にインサイドOF、図では5OF)にイージーパスが通ることが一番危険なので、アウトサイドDF(2DF)はスクリナーへのパスをきっちりケアしながらスイッチを行うのがポイントである。
毎度のことながら、これによって生じたインサイドのミスマッチは、Scramによってカバーする。
 
 
 
 
 
 
⑤Late Clock Switch-Out
 

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ショットクロックぎりぎりいっぱいを使ったボールスクリーンプレーに対するスイッチDFオプション。

スクリナーDFに、元々のインサイド(5DF)ではなく近くのアウトサイド(2DF)が向かい、インサイドDFはその代わりにアウトサイドOF(2OF)をマークする。
この予めのオフボールスイッチによって、ボールスクリーン・スイッチに伴うアウトサイドのギャップを最小限にすることが目的である。
ショットクロックぎりぎり』というのがミソで、相手はこのスイッチの結果生まれるインサイドのミスマッチを使う十分な時間が無いことが多い。
 
実は弱点なのは、図の左コーナーである2OF…5DFのアウトサイド・ミスマッチで、対策としてはここにボールを入れてミスマッチを攻めるという方法がある。